物流ドライバーを苦しめる「腰痛」問題! 米国の衝撃“1ドル強盗事件”が浮き彫りにした経済損失の現実
運転姿勢で腰への負担軽減
結論として、座る姿勢は立つ姿勢よりも腰への負担が1.4倍高いという報告がある。これは日本予防医学協会の「No more 腰痛!~在宅ワーク時、ココに注意!~」(2020年12月1日)のなかで言及されている内容だ。 「意外かもしれませんが、背もたれを使用しない座り姿勢で腰にかかる負担は立ち姿勢の約1.4倍だといわれています」 この考え方は、スウェーデンの整形外科医ナッケムソンが提唱した「姿勢の変化による椎間板内圧の変化」に基づいていると思われる。 筆者も、腰に負担の少ない生活動作の指導を行うことがあるが、姿勢や動作の指導には個別性が非常に重要であるため、一般論として当てはめる前に担当医に確認することを強くお勧めする。 特に運転時の姿勢やシート調整が腰への負担に大きな影響を与える。例えば、シートから背中が離れていると腰にかかる負担が増えるが、腰をシートにしっかりとつけることで負担を軽減できる。 腰痛予防のためには、シートポジションとドライビングポジションの確認が重要だ。具体的には 「お尻の後ろに隙間が空いていないか」 をチェックすることが大切である。 詳細な指導については、JAFが提供する菰田潔氏による「疲れにくく、より安全に!ドライビングポジションの整え方を動画で解説」の動画が非常に参考になるので、ぜひ確認してほしい。 次に、物流業界で腰痛予防を推奨することが、私たちの生活にどのような影響を与えるかを考えてみよう。
腰痛予防が生む経済効果
厚生労働省の資料によると、腰痛が原因となる全業種(物流業界含む)の経済損失は 「約3兆円」 に達している。国民ひとりあたりの負担は約2.7万円に相当すると報告されている。 特に腰痛の発生率が高い運送業界においては、予防策を講じることが極めて重要だ。もし腰痛に関連する費用の1/3でも削減できれば、その分を経済成長に役立てることができるだろう。また、タクシー業界の利便性向上にも寄与する可能性がある。 具体的には、医師の舟越光彦氏らが行った「タクシー運転手の腰痛に関連する要因の研究」が有益だ。この研究では、福岡市内のタクシー会社A社に勤務する約280人を対象に、腰痛による休業日や平均賃金を元に経済損失を算出した。その結果、A社では腰痛による休業などが年間約1500万円の経済損失を生み出し、これは年間売上の 「0.7%」 に相当するという。このように、腰痛予防は経済面だけでなく、 ・企業の収益 ・業界の安定化 にも大きな影響を与えることが明らかだ。つまり、腰痛予防は単なる健康管理にとどまらず、経済的な観点からも非常に重要な課題であるといえる。 最後に、冒頭のケースを振り返りながら、記事の内容をまとめてみよう。