「外遊びの時間が減ると近視になりやすい」の事実 --大事なのは、遺伝よりも子ども時代の環境
為末:「子どもの声がうるさい」と言われてしまうと、たとえそれが少数派でも、親御さんたちは気を遣って、子どもに注意をします。「もっと小さい声で静かに遊ぼう」となりがちです。でも、子どもが外で静かに遊ぶなんてできるわけがないでしょ、って思うんですけど(笑)。 窪田:できるわけない(笑)。自分の子どもの頃を考えても、そう思います。 為末:ドイツでは、もう10年以上前に子どもの声を騒音の対象外にするという法律が制定されています。「子どもの声は騒音ではない」とはっきり示されている。
窪田:日本では子どもの遊び場そのものが減っているんですね。 為末:さらにルール上の問題もあります。例えば、放課後に学校の校庭を使おうとすると、管理者の許可が必要になります。何か問題が起きたら、校長先生が責任を負わされる。それだと先生も「いつでも自由にどうぞ」とは言いづらくなりますよね。それに対して大阪などでは、放課後の校庭を地域で自治管理するという動きも出てきています。 窪田:国や自治体で、積極的に子どもの遊び場を作っていく必要があると。
為末:そう感じます。「外あそび推進の会」の調査で興味深かったのが、外遊びに対する世代間の認識の違いが大きいこと。さらには、都市部と地方でも違いがあることが分かってきました。 窪田:世代間の違いとは? 為末:ある世代以上の人たちにとっては、自分たちは自由に外遊びができていたので、そもそも遊びの環境を整える必要があることが、直感的に理解されにくいんです。 窪田:たしかに「わざわざ環境を整える必要があるの?」と思う人は多そうです。でも、安全性の面から見ても、子どもを取り巻く環境は、ここ数十年で大きく変わっていますからね。
■都市部か郊外か、住む環境で近視のなりやすさが変わる 為末:もう一つの、都市部と地方での認識の違いも大きくて、先ほどの学校の校庭が使えない問題も、ほとんどが都市部で起きています。一方、地方ではわざわざ学校の校庭を使わなくても、公園や広場がたくさんあるので「そこで遊べばいいんじゃない?」と。 窪田:遊び場がないのは、都市部の課題と受け止められてしまう。 為末:やはり温度差はありますね。地方に行くと「むしろ最近は公園に子どもがいなくて寂しいくらいだよ」と言われることも。地域によって、子どもたちが外遊びできる環境作りの重要度が変わってくる。活動を通して、それを実感しました。