「外遊びの時間が減ると近視になりやすい」の事実 --大事なのは、遺伝よりも子ども時代の環境
今や、小中学生の2人に1人は近視になる時代。文部科学省によると、子どもが近視になる割合は増加し続け、特に低学年ほど近視になる子どもが増える傾向にあるという。さらに2024年9月には科学界の最高権威である全米科学アカデミーが、「近視を食い止めることは世界的な課題」だと発表している。 しかし、日本ではこの事実はほとんど知られていない。そこに警鐘を鳴らし続けているのが、眼科医の窪田良氏だ。 今回は、『近視は病気です』(東洋経済新報社)の著者である窪田氏と、日本を代表するアスリートであり、「子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会」のメンバーでもある為末大氏が、子どもの外遊びをテーマに4回シリーズで対談する。 【この記事の他の画像を見る】
長年の知り合いで、気心の知れた2人。第1回では、近視の抑制につながる外遊びの現状を語り合う。 ■近視のなりやすさは幼少期の過ごし方で決まる 窪田:為末さんは「子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会(以下、外あそび推進の会)」のメンバーでもありますが、そもそも活動に参加しようと思ったきっかけは何だったのですか? 為末:2020年にこの会の協賛企業から「参加しませんか」と声をかけていただいたのですが、私が興味を持ったのは、窪田先生もおっしゃっている外遊びと近視の関係でした。
子どもが外に出て太陽光を浴びる時間が減っていることで、近視になる割合が高くなっている。将来的に失明や目の病気になるのを防ぐためには、幼少期からの過ごし方が大事だということもそこで初めて聞きました。 窪田:おっしゃる通りで、小学生の時期にできるだけ外で活動をすると、近視になるのを防いだり、近視が進むのを遅らせたりすることができます。すでに大規模な臨床試験でも証明されているんです。 目について先進的な取り組みをしている台湾では、小学生を対象に学校で1日2時間程度、屋外活動が義務づけられています。その結果、近視の発症が抑えられているというデータもあります。