インバウンド客に無理な「英語対応」はいらない…一言目は「やさしい日本語」で話しかける重要性
近頃は繁華街や観光地を歩いていて見ない日がないほどの訪日外国人。飛び交う言語もさまざまで、英語や中国語はすぐに判別できるものの、「これは何語なのだろう……?」と首をかしげてしまうような、日本人にとって馴染みの薄い言語を話す人々に遭遇することもしばしばです。 観光客を迎え入れる側としては、いったい何カ国語を話せれば、世界中のお客さんに対応できるのだろうと辟易してしまいますが、大分県で旅館を営む二宮謙児氏は、「“やさしい日本語”で話しかければ、コミュニケーションの最初の一歩をスムーズに踏み出すことができる」と話します。
日本語で話しかけると聞くと、「もし、通じなかったら……」という不安や恥ずかしさがつきまといますが、言語の堪能さにかかわらず、相手が満足するコミュニケーションは実現できると二宮氏は示します。 そこで今回は、同氏の著書『山奥の小さな旅館に外国人客が何度も来たくなる理由 「また行きたい!」を生む新インバウンド戦略』より、外国人との意思疎通をスムーズにする方法を抜粋編集してお伝えします。 ■英語が得意なスタッフに頼ってばかりで苦戦した過去
九州は比較的アジアのお客様が多いのですが、おおむねどこの国の方も英語を話します。 母国語ではないので、ヒアリングはお互いに聞き取りにくかったりすることはありますが、共通言語である英語を習得すれば、大概の国の人とコミュニケーションがとれます。 しかしながら1つ問題がありました。当時、当館でまともに英語を話せるスタッフは女将だけだったので、彼女がいないときはお手上げ状態だったのです。 一番のネックは「電話応対」でした。女将がたまたま留守をしていて、ほかのスタッフが電話を取ると、英語での問い合わせで、あわてて「ノーイングリッシュ! ノーイングリッシュ!」と言って電話を切ってしまう。そんなこともたびたびありました。
おそらく、日本全体として、インバウンドの増加とは裏腹に、外国人客に対して積極的な旅館が少ない原因はこんなところにあるのではないでしょうか。 私もそうですが、学生の頃から、「正しい文法・正しい発音で話さなければならない」という強迫観念にも似た思いから、理解はできても「なかなか言葉が口をついて出ない」という状態に陥るのです。 その結果、「できるだけ外国人と話すまい」「目を合わさないようにしよう」ということになってしまいます。