中絶、緊急避妊薬、トランスジェンダー“不妊手術”への補償… 国連が日本政府へ「性と生殖に関する健康と権利」多数の勧告
マイノリティー女性に対する差別についても勧告
CEDAWはアイヌや同和地区、在日コリアン、移民、障害者、性的少数者など、マイノリティーのグループに属する女性への「交差的(複合的)な差別」を根絶するための努力を行うことも、日本政府に勧告している。 高井氏は「SRHRは奪われている人と守られている人がいる」「いまの社会では特定の人(マジョリティー)にとってだけ都合のよい性のあり方が守られている」と指摘し、マイノリティー女性は性や生殖に関しても被害を受けやすいと説明した。 「だれがだれより恵まれているか、という問題ではなく、人によっておかれている課題が異なるということ」(高井氏) また、マスコミによる報道では皇室典範に対する勧告が中心に取り上げられている点について「『日本のことを何もわかっていない人たちが、日本の性差別に口出ししている』との印象を抱かせてしまう」と指摘し、他の問題に関する勧告も報道すべきだと苦言を呈した。
選択的夫婦別姓に関する勧告は4回目
選択的夫婦別姓やジェンダー平等などを求めて活動する「あすには」代表の井田奈穂氏は、CEDAWが現状の夫婦同姓制度について日本政府に改善勧告を行ったのは今回で4回目であることを指摘。2003年に最初の勧告が出されてからも日本政府が改善に向けた措置を取らなかったとしたうえで、「勧告は政府の無作為を明確に指摘している」と評価した。 また、ジュネーブ現地では日本政府の関係者や報道記者で旧姓を使用していた女性らが身元を証明できず、国連の建物に入れなくなるなどのトラブルが発生したという。これを受けて、井田氏は「外務省の関係者も限界を感じている」と述べた。 そして、「日本政府は女性差別撤廃条約について理解できていないのではないか」「(選択的夫婦別姓制度に多数が賛同しているという)民意は明らか」など、個別のCEDAW委員らのコメントも紹介。「条約に批准しているからには、日本政府はルールを守るべきだ」と語った。
弁護士JP編集部