この圧倒的な気持ちの良さはなんだ! マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダーにエンジン編集長のムラカミが試乗 ゆったりした時間が流れるスポーツカー!!
改良が加えられたクーペにも試乗!
マクラーレンの新時代を切り開くハイブリッド・スーパースポーツ、アルトゥーラに加わった、オープン・モデルが日本上陸。2025年モデルから改良が加えられたクーペとともに試乗した。エンジン編集部のムラカミがリポートする。 【写真15枚】マクラーレンのアルトゥーラに加わったオープン・モデル、アルトゥーラ・スパイダーの詳細画像を見る ◆近所迷惑にならない 試乗会の舞台となった岩手県安比高原のリゾートホテルには、スパイダーのみならず最新のクーペも用意されていた。実はこの春、アルトゥーラはパワートレインを中心としたマネージメント・プログラムのアップデートを受けており、クーペもプログラムの変更によりエンジンが20psアップの605psとなり、電気モーターと合わせたシステム最高出力が700psの大台に乗ったのに加えて、EVでの走行距離が約1割増しの最長33kmになるなど、スパイダー同様にブラッシュアップされたのだ。 そこで、まずは最新のクーペを試した後に、お目当てのスパイダーにじっくりと乗ることにした。 リゾートホテルのエントランスを出る時には、スルスルと電気モーターで無音で進む。スーパースポーツカーのハイブリッド化の最大のメリットは、たとえば自宅のガレージから早朝に出かける時などに近所迷惑にならないことだ、と改めて実感した。このまま33kmも走れるのなら、街中を脱出して高速道路に乗るまでだって無音走行できるだろう。 けれど、今回はホテルの敷地を出たら、すぐにEモードから切り換え、アクセレレーターを強めに踏んでエンジンを始動する。コンフォート・モードだと、走行状況によってEV走行とエンジン走行が切り替わるが、そのスムーズさにまずは感心した。 マクラーレンに乗っていつも感じるのは、ステアリングやペダル操作に対するクルマの動きや、路面の荒れを受け止める足回りの動きが、すべて驚くほどスムーズで運転していて心地よいということだ。そのおかげで、まるでクルマと一体になったような感覚が得られるのだ。クーペの最新モデルは、電気と内燃機関との切り換えも含めて、そのスムーズさに磨きがかかったように思った。 やがて、勾配の強い山道に入る。とにかく速い。踏めば瞬時に加速していくパワー感が気持ちいい。しかし、延々と続く上りの山道を走っていて初めて感じたのが、やっぱりハイブリッドは少し重いかな、ということだった。700psで重量が1510kg。普通のクルマとしては驚異的なスペックだが、マクラーレンとしては必ずしもそうは言えない。750Sは750psで1390kg。そのとてつもない軽快感と一体感を、私の身体が覚えているのだ。 ◆ゆったりした時間が流れる 山道の途中からスパイダーに乗り換えた。さらに60kgほど重いのだから、どうしたって重さを感じてしまう。ボディ剛性もほぼ変わらないと言われても、クーペからすぐに乗り換えれば、違いを感じるのは仕方あるまい。山道を何度か上ったり下ったりしてコーナーを駆け抜けながら、やっぱり走りはクーペの方がいいのかな、と考えていた。 ところが、その後、もう比較試乗はいいやと思ってルーフを開けて少しゆっくりと流すような速度で走り始めて、「あれっ、この気持ち良さはなんだろう?」と、これまで乗ったマクラーレンのどんなモデルともちょっと違う気持ち良さを感じていることに気づいたのだ。もちろん、マクラーレンならではのクルマとの一体感はあるのだけれど、それと同時に、もっとリラックスして乗れるというか、ステアリングを握っていて、こんなに緊張感が少なくて、ゆったりした時間が流れるマクラーレンってあったっけ、と不思議な発見をした気分になってきたのだ。 山道を流している時には、少し風を感じながら走るのが、すこぶる気持ち良かったし、逆に高速道路では屋根を開けていても風の巻き込みはほぼ皆無で快適そのものだった。そして、その圧倒的な気持ち良さを味わいながら、ふと思い出したのだ。そういえば、MP4-12Cに初めて乗って以来、マクラーレンの走りに瞠目しながらも私がずっと気になっていたのが、あまりにストイック過ぎじゃないのか、という点だったことを。乗り降りには高い敷居をまたがなければならないし、室内にはグローブボックスはおろか小物置き場もない。レーシングカーじゃないんだから、もう少し遊びが欲しい。 そうか、ついにマクラーレンにも遊びの要素を入れた、ゆったりした時間が流れるスポーツカーが誕生したということか。そう思うとこのスパイダーが急に愛おしく思えてきた。 文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=マクラーレン・オートモーティブ・ジャパン ■マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダー 駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン+電気モーター4後輪駆動 全長×全幅×全高 4539×1913×1193mm ホイールベース 2640mm トレッド(前/後) 1650/1613mm 車両重量(車検証) 1570kg(前軸640kg、後軸930kg) エンジン形式 水冷120度V6DOHCツインターボ 排気量 2993cc 最高出力(エンジン+モーター) 700ps(605ps/7500rpm+95ps) 最大トルク(エンジン+モーター) 720Nm(585Nm/2250-7000rpm+225Nm) トランスミッション ツインクラッチ式8 サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル サスペンション(後) マルチリンク/コイル ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボン・ディスク タイヤ(前/後) 225/35ZR19/295/35ZR20 車両本体価格(税込み) 3650万円 (ENGINE2024年11月号)
ENGINE編集部
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