サブカル文脈から読み解く日本アイドル、BABYMETALと新しい学校のリーダーズ
ももクロから始まったアイドルシーンが、形は違えど世界の大舞台に出た10年
Toryanse / 新しい学校のリーダーズ 田家:新しい学校のリーダーズの2024年1月に配信になった曲「Toryanse」。 西澤:海外というところを見据えたときに、やっぱり和楽器だとか日本の童謡だとか、そういうものはみなさん取り入れることが多いと思うんです。ただ取り入れるだけだとおもしろくないのでっていうところで、所謂ダンス・チューンな感じにされていて、本当に掴みどころがあるようでないんですよね(笑)。新しい学校のリーダーズって。 田家:たしかにね。どこかはみ出している感じはありますもんね(笑)。 西澤:ある種、コミックソングみたいになってもおかしくないところを、しっかりかっこいいクールな感じに仕上げているのもおもしろいですよね。 田家:さっきちょっと話に出たTikTokが変えたことって本当にたくさんありますよね。 西澤:コロナも大きいと思うんですけど、誰でもできる、真似できるものというのが1つキーワードになっている。特にダンスは、切っても切り離せないもので。TikTokだとスマホの画面に映る範囲になるので、上半身になるじゃないですか。なので、手とか首とかで象徴的なダンスみたいなものがすごく求められるようになったというのは、ダンスの振付師の先生とかも言っていましたね。アイドルとかアーティストからのダンスの振付の発注依頼も、手軽に真似できるもので、TikTokでみなさんが投稿しやすいものを作ってほしいという依頼がとにかく増えたと聞きますね。 田家:先週までのグループはライブを一生懸命やってきた人たちでもあったわけでしょう。TikTokでいきなり火がついた人たちは、ライブ経験がなかったり、ライブを通過していない。そういう世の中に対しての出方なので、ある種の変化が始まっているんだろうなと思いますけど。 西澤:アイドルシーンに限らず、バンドもそうですね。楽曲、特に失恋ソングみたいなもので共感できるものがTikTokですごく再生回数が増えていて。その1曲だけで大きい会場。それこそ500人、1000人の会場を埋められるくらい観客を集められる流れができている。バンドはライブをまだ1回もやったことないみたいなことは結構起こっていますね。 田家:新しい学校のリーダーズはカルフォルニアで行われている世界最大の音楽フェス「コーチェラ」でこの「Toryanse」も歌ったんでしょ。 西澤:すごいですよね。まさに先週紹介したBERLING少女ハートは活動当初からコーチェラに出ることを目標に活動していたんですよ。 田家:そういう意味でいくと、本当にももクロから始まったアイドルシーンが、ついに形は違えど世界の大舞台に出たという10年でもあったのかなという。 西澤:今年の4月に出て、2週連続で出ているんですよね。1週目で現地で話題になり、2週目でもっと人が集まって見たい!っていう。きっかけはTikTokだったり、事務所の力とかもあったかもしれないんですけど、ちゃんと現場で実力でお客さんたちを掴んでくるというところが、彼女たちのかっこいいところなのかなと思います。 ドラ1独走 / 椎名林檎と新しい学校のリーダーズ 田家:2024年5月発売、椎名林檎と新しい学校のリーダーズの「ドラ1独走」。林檎さんのアルバム『放生会』の中の曲で詞曲が林檎さんですね。この曲を選ばれたのは? 西澤:僕の学生時代にサブカル誌『Quick Japan』で椎名林檎さんが取り上げられていたんですけど、僕にとって、椎名林檎さんがサブカルかどうかって、年をとってみると、いまいちなかなか定めきれなくて、ここで交わっているというのも何か不思議な縁というか。 田家:メジャーの中でサブカルの志向があった人ですもんね。ある種の必然的な出会いでしょうね。そういう中であらためて思ったことがあって。2週目のBiSとBiSHを世に送り出したWACK、事務所の代表の渡辺淳之介さんがこの間WACKを退任して、しばらくロンドンに行く。彼のインタビューの中に、こういう鍛えられた人たちがやると、自分たちがやっていたことは出番がなくなるんじゃないかみたいな話をされていて。すごく今の時代を言い当てているなと思ったりしたんですよ。 西澤:2010年代、メジャーに対するカウンターで地下アイドルシーンが盛り上がってきて、まさにサブカルチャーが自由奔放にできた時代だったんですけど、今度はメジャー側がそれを上手く取り入れるような形になってきたということで、サブカルチャーというものが漂白されている。それは、僕もすごく感じていますね。 田家:今まで自分たちがやっていたサブカルというのが薄まっていってしまう。もう1回自分たちがやりたいことを考えさせる時間がほしいみたいな。 西澤:特に渡辺さんや、ベルハーとかゆるめるモ!もそうですけど、日本だけでなく海外のカルチャーを吸収して、本当に好きなものをどうやってさらに進化させるか、おもしろいものにするかを追求して生まれたグループたちだったと思うので。そういう意味で、それまで彼らが培ってきたカルチャーを1回消化した状態だと思うんですよ。だからこそ、また新しく自分の中で次なる素材というか、新しいものを取り入れて、またそれで新しいものを生み出すための充電期間もあるのかなと思いますね。 田家:さっきおっしゃったBERLING少女ハートがコーチェラに出たいと言っていて、実際に出た人たちが目の前にいたときに、出たいと言っていたことのある種の健気さみたいなものはどこに行くんだろうみたいな感じもあって。ある種の分岐点が去年、今年ぐらいかなと思ったりもしたんですよ。 西澤:僕は近くで見ていたのもあるんですけど、本当に他にないものをやっているので、BERLING少女ハートにコーチェラ出てほしかったなという気持ちは正直ありますね。 田家:最後の曲は、あらためて僕らのサブカルみたいなニュアンスで選んでもらえないかなということでお願いしたんですよね。そしたら、この曲を選んでくれたんです。