4回転のない高橋大輔が全日本2位となった“お手本”という名の復帰意義
際立つ作品の表現力
今シーズンから競技時間やジャンプに制限がかかり、GOEの幅が広がるようにルールが改正され、4回転の競演よりも演技全体の芸術性、作品性が見直される流れに変わったが、高橋のスタイルは、まさに、その新時代のスケートの“お手本”となるものだった。 もちろん世界で頂点を争うには多種類の4回転が跳べなければ厳しい。優勝した宇野とは、50点弱の点差があった。しかし、スケーティング技術と表現力、作品の完成度を高めるだけで、ここまで勝負できることを証明したのだ。 フィギュア関係者からは、「4回転のないスケーターが2位になった意義を若手は見習い、参考にしていくべき。彼は、その人格、かもし出される華の部分も含め、みんなに尊敬されているし、目の前にいるお手本として、今回リンクに戻ってきた意義は大きかった」という声も聞かれた。 その素晴らしいステップに対しては、会場から大歓声が起きた。4回転という技術がなくとも、ファンを巻き込む魅力……それが高橋大輔の“魔力”であり、今後、世界のトップを目指す若手が見習うべき姿だろう。 4年ものブランクを経て、近畿ブロックの3位から西日本選手権優勝とステップを踏み、32歳の体に鞭を打ち、徐々に体力をつけながら、最初の目標を達成した高橋の努力の軌跡も、共にリンクに上がったスケーターや関係者を感動させた。 “生きるお手本”としてレジェンドの現役復帰の意義は日本フィギュア界にとって大きかった。 もし現役続行をするのならば、来季は今回辞退となった全日本の先を目標にして欲しいとの声もある。 「これが今年ではなく2年前に復帰を決断していたら覚悟を持てていたのかもしれません。もし来年も続けるならば狙うかもしれないけど、ジュニアの子も成長してきますからね。僕は、来年、もう世界選手権を狙える位置にはいないと思いますけど。狙うかもしれないし、分からないです。でも、辞めるつもりはない。きょうの演技だと悔しくて、すっきり終われない感じです。もうちょっとできるはずだという気持ちが出てきています」 愛される“レジェンド”は素直に本音で語った。高橋大輔の2019年の戦い、そして、それを追う“高橋2世”の出現が楽しみになってきた。