切っても切れない「加齢とおしっこ」の悩み。ふとした瞬間に「チョイ漏れ」する大人の尿失禁とは?
年齢を重ねるにつれ、現れてくる体の変化。仕事中にトイレが近くなった、くしゃみをすると尿漏れする、寝る前に何度もトイレに行かないと落ち着かない……。そんな「おしっこ」にまつわる悩みを抱えている方も少なくないかもしれません。 泌尿器科医である堀江重郎さんの著書『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える 腎臓・膀胱 最高の強化法』では、「ある研究機関によると、調査対象のうち40代~70代の女性の約3割、50代~70代の男性の約3割に『尿漏れ』の症状があることがわかっています」と伝えています。人口比で推定すると、男女合わせて2000万近くもの人が尿もれに悩んでいることになるとか。 本人にとっては生活の質(QOL)に関わる大きな悩みながら、なかなか周囲には打ち明けらづらい「大人の尿失禁」について、堀江先生の著書から特別にご紹介します。
年をとると、「溜める」「出し切る」がうまくいかない
加齢現象は、程度や現れ方、現れる時期に差はあるものの、誰にでも必ず起こってくるものです。 それは排尿においても例外ではなく、「快尿」とは正反対の現象が起こってきます。とくに代表格といえる「頻尿」「残尿感」「尿失禁」は、早い人だと男性で40歳、女性で50歳くらいから現れます。 こうした排尿の加齢現象を生む一番の理由は、「膀胱の筋肉の衰え」です。 膀胱は厚いゴム風船のような筋肉の袋です。年をとるにつれて、動脈硬化などにより、膀胱に流れる血液(血流)は減っていきます。血液と筋肉には密接な関係があるため、膀胱の血流が減ると膀胱の筋肉のしなやかさが失われ、硬くなってしまいます。
「出し切った」というスッキリ感が得られるかどうか
若いころの膀胱がゴム風船なら加齢によって紙風船になってしまうといってもいいでしょう。伸縮性が落ちると膀胱の容量も減ってしまいます。つまり「快尿」の条件である「尿が膀胱に十分に溜まること」が失われ、しょっちゅうトイレに行きたくなるのです。 ここで問題となるのは、「トイレで一気に出し切った」というスッキリ感が得られるかどうかです。 残尿感がなくスッキリとしたおしっこなら、トイレに行く回数が人より少し多いように思えても、膀胱が老化しているとは見なさなくていいでしょう。 また、膀胱の筋肉が衰えると、排尿したいときに膀胱が十分に収縮しなくなります。 つまり尿を押し出す膀胱の力が弱くなるため、尿が出切るまでに「約21秒以上」かかったり、尿が出切らずに「いつも何となくトイレに行きたい感じ」になったりします。快尿の条件「尿が膀胱からスムーズに出切ること」が失われているわけです。 尿失禁は、お腹にちょっと力を入れただけで漏れてしまう、あるいは急に尿意をもよおしてトイレが間に合わないという現象です。出産後の若い女性に起こることもありますが、多く見られるのは、やはり中高年になってからです。 加齢とともに膀胱を支えている構造に緩みが出たり、膀胱が知覚過敏になったりすることで、尿が漏れやすくなるのです。 また、男性では、加齢による前立腺肥大が、頻尿や残尿感、尿失禁につながっているケースも非常に多く見られます。