切っても切れない「加齢とおしっこ」の悩み。ふとした瞬間に「チョイ漏れ」する大人の尿失禁とは?
小さいけれど大きな悩み。3つの「尿失禁」とは
ふとした瞬間に「チョイ漏れ」する、トイレが間に合わない、気がついたら下着が湿っている……。大人の尿失禁は大きく3つに分けられます。
(1)腹圧性尿失禁
咳やくしゃみをしたときや、笑ったとき、自転車をこぐときなど、お腹に力が入った瞬間に「チョイ漏れ」してしまう症状です。とくに40歳以上の女性に多く見られますが、それにはいくつか理由があります。 まず、女性のからだは、構造的に、膀胱の出口にある「尿道括約筋」が男性より弱くできています。男性のからだは尿道が長く、前立腺によって尿道括約筋がしっかり支えられていますが、女性は男性より尿道が短いぶん、尿道括約筋を支える筋肉のサポートも弱くなっているのです。 そこへ出産や婦人科の手術が加わると、さらに尿道括約筋のサポートが弱まり、ちょっとお腹に力が入るだけで漏れやすくなります。 また、出産や加齢によって「骨盤底筋群」が弱ってくることも、腹圧性尿失禁の一因です。骨盤底筋群には尿道を圧迫して尿を止める役割もあり、それが弱ってくると尿道の締まりが悪くなるため、お腹に力が入った瞬間に尿が漏れてしまうのです。 さらに、何度か出産をした女性は、多くの場合、膀胱や尿道を支える「筋膜」の働きも弱くなります。すると、いわば水の入った袋が不安定な場所に置かれたようになるため、やはりふとした瞬間に漏れやすくなります。
1人で悩まず、病院へ
このように尿失禁の種類は3種類で、原因は多岐にわたりますが、対処法はあります。 腹圧性尿失禁は、症状が軽い場合は、外尿道括約筋や骨盤底筋群を鍛えることで改善が期待できますし、症状が重い場合も、手術でほぼよくなります。 手術も進化しています。これまでは弱った筋膜を補強する「メッシュ手術」という治療法が中心でした。弱ってしまった筋膜に代わって膀胱や尿道を支えられるよう、お腹に「メッシュ」と呼ばれる人工物を入れる術法です。 ただ、この手術はからだに異物を入れるため、副作用も多く報告され、今では行われなくなりました。その代わりにレーザーにより膀胱周囲を温めることで、失禁を治す治療が普及しつつあります。 レーザー手術は開腹手術ではなく、患者の肉体的な負担も時間的な手間も少ないうえ、症状の改善が期待できるというメリットがあります。あまり怖がらずに専門家に相談するといいでしょう。 過活動膀胱による切迫性尿失禁には薬がある程度効果があります。 溢流性尿失禁には、前立腺肥大症の治療あるのみです。肥大の進行度によって、投薬治療、超音波を使った手術、肥大部分を切除する手術などが考えられます。 写真:Shutterstock 構成/金澤英恵