132カ国めぐった“バックパッカー”弁護士 旅の中「世界の裁判」を傍聴して気づかされたもの
海外“傍聴”デビューにおすすめの国は?
――海外旅行が趣味の方でも、裁判傍聴に挑戦するのは少し勇気がいるかもしれません。興味があるという方におすすめするとしたら、どの国が良いでしょうか? 原口:これは人によって好みがわかれると思いますが、肌感覚として、ヨーロッパは全体的に入りやすいと思います。ただ、傍聴人が珍しくないので、特別扱いはされません。逆にアフリカの国では傍聴人が珍しいため、周囲の人から話しかけてくれることが多く、話題が広がります。 最近行った地中海の島国マルタでは、一番の観光名所「聖ヨハネ大聖堂」の前に裁判所があるので、観光客でも寄りやすかったです。観光ついでに寄ってみると面白いかもしれません。 ――これまで132カ国に渡航されたとのことですが、中でも思い入れのある国はどこですか。 原口:この質問は“軸”によって答えが変わってくるので、質問されたら毎回違う国を挙げるかと思います。「お酒を飲む楽しさ」「海の美しさ」「ごはんの美味しさ」「友達の数」「裁判所のウェルカム感」などなど……。それぞれのお気に入り軸で語ったら、一晩はかかってしまいそうです(笑) ただあえて一般的なことを言えば、街の様子や人とのコミュニケーションのしかたが日本と違えば違うほど面白いとは思います。砂漠と街が全く異世界の地中海のアルジェリアとか、ハンモック生活をしたブラジルのアマゾンとか。戦争前は安全に街歩きができた中東のシリアも印象に残っています。
エッセイ本「難しいことは書いていません」
――7月に発売された『ぶらり世界裁判放浪記』(幻冬舎)は、訪れた国について、さまざまな“軸”でエピソードが綴られ、旅行や傍聴を読者が追体験できるよう描かれています。読者からはどんな感想、反響が届いていますか。 原口:発売する前には「同業者(弁護士)には『旅本だね』と言われ、旅好きには『裁判の本だね』と言われるかな」と予想していたのですが、意外とそうでもなく、むしろ両者を型にはめていた自分にも気づきました。 あとは、やはり国ごと町ごとの章立てなので、読者の方が特に心に残った国や町という視点から具体的な感想を聞かせてもらえることが多いのも嬉しいです。 ――まだ書籍を読んでいない方に向け、おすすめのポイントなどがあれば教えて下さい。 原口:「裁判」というと難しそうなイメージを持つ人もいるかもしれません。裁判を専門家たちが難しいものにしてきたことも要反省なのですが、この本はエッセイ本なので難しいことは書いていません。 基本的に書いてあるのは、「私が旅の中で、裁判所の内部や周辺に生息する人たちとどういう話をして何を思ったか」という、しょうもないことばかりです(笑)。旅好きではなくても、裁判のイメージが湧かなくても、少し変わったコミュニケーションの記録として、よろしければ読んでみてください。
弁護士JP編集部