中国人民銀行が国債売却へ:中国版シリコンバレーバンク破綻も警戒か
中国で長期国債の利回り低下が加速
中国では今年に入ってから、長期国債の利回りが急低下し、国債市場の過熱が目立ってきている。10年国債利回りは6月末に2.1%台まで低下した。これは、2000年以降で最も低い水準と考えられる。2013年末の4%台半ばをピークに10年国債利回りは低下トレンドを辿っているが、足もとではその低下ペースが加速している。これは、中国経済の低迷と平仄を合わせた動きだ。 利回り低下の背景には、不動産不況などを受けた景気の低迷、物価上昇率の低下、中国人民銀行(中央銀行)による金融緩和観測、リスク回避(質への逃避)などがある。 利回りの低下には、低迷する国内経済を下支えする効果が期待される一方、人民元安を促し、それが国内資金逃避を後押ししてしまう可能性や、米国から通貨切り下げ批判を受けるなどの弊害がある。さらに、行き過ぎた利回りの反動で、利回りが大きく上昇すれば、国債を保有する金融機関に含み損が広がり、金融システムを不安定化させる可能性もある。昨年米国で生じたシリコンバレーバンク(SVB)の破綻のようなことが中国で生じることが懸念されている。
中国人民銀行が国債を借り入れ売却を準備
そこで、中国人民銀行は、長期国債の利回りの安定確保に乗り出した。人民銀行は7月1日に、公開市場操作(オペ)で近く国債を借り入れると発表した。借り入れた国債を市場で売却することで、利回りの低下をけん制するためだ。中国人民銀行は、「債券市場の健全な運営を維持するため、市場の形勢を慎重に観察した上で、近くオペを通じて一部の金融機関から国債を借り入れることを決めた」とのコメントを発表した。 人民銀行の潘総裁は6月19日に、金利上昇による保有債券の含み損が一因となって破綻したSVBを例に挙げて、「一部の金融機関の大規模な中長期債券保有に伴うリスクに注意しなければならない」と過度の国債買いに警鐘を鳴らしていた。 人民銀行は7月5日に、複数の主要金融機関と「数千億元」相当の中長期債を自由に借り入れられる契約を締結したことを明らかにした。これは、国債売却に向けた準備が進んでいることを伺わせるものだ。この発表に先立ちブルームバーグは、人民銀行が国債借り入れで中国工商銀行と契約したほか、中国郵政銀行とも協議中、とする関係者の話を報じている。