この地球に「生命の材料」を運び込んだのは…小惑星イトカワのかけらから判明した事実が「衝撃的だったワケ」
C型小惑星「リュウグウ」へ
はやぶさの成功を受けて、その後継機「はやぶさ2」をどう計画するかが議論されました。 初号機がS型小惑星に行ったので、次は炭素質コンドライトに似た外観で、水や有機物を多く含む可能性がある「C型小惑星」が面白いだろう、太陽系の起源のみならず、生命の起源に関する情報が得られることも期待できるのだからーーとの意見が優勢となりました。一部には、再度イトカワに行ってより多くの試料を取ってくるべき、と主張するグループもありましたが、結局、C型小惑星に行くことが決まり、その対象とし1999JU3という小惑星が選ばれました。 この小惑星もイトカワ同様、地球近傍小惑星です。2014年12月、はやぶさ2が種子島宇宙センターから打ち上げられ、2015年10月に小惑星名が「リュウグウ」(図「リュウグウ」)に決まりました。水やサンプルを持ち帰る容器を「玉手箱」にたとえたことからの命名です。 初号機と異なり、はやぶさ2は比較的順調に航行し、2018年6月にリュウグウに到着、2019年2月と7月の2回、着陸が行われました。2回目に先立ち、小型搭載型衝突装置(SCI)をぶつけて人工クレーターを作成したことで、小惑星内部の物質を含む試料が採取できていることが期待されました。その後、帰還の途につき、2020年12月、無事に試料カプセルが地球に送り届けられました。
隕石は地球に小惑星の有機物を運んでいた
2022年からはリュウグウ試料の初期分析結果の報告が相次ぎ、C型小惑星が炭素質コンドライトの母天体であることがはっきりしました。2023年には、種々のアミノ酸が、右手型と左手型が同じ量だけ存在すること、つまりラセミ体であることもわかりました。また、核酸塩基の一つであるウラシルが検出されたことも報告されました。 これらのことから、小惑星の内部に存在した水や有機物が、そのかけらである炭素質コンドライトにより地球に運び込まれた可能性がより強くなったのです。 さて、地球に有機物を宇宙から地球にもたらす運び屋は、隕石以外にも彗星や、氷と塵の塊である彗星から氷が昇華したり、小惑星どうしがぶつかったときなどにできる宇宙塵(うちゅうじん。惑星間塵[わくせいかんじん]とも)も、大きな役割を果たしていることがわかってきます。 このあたりの詳しいご説明は『生命と非生命のあいだ』に譲り、続いては左手・右手のアミノ酸の2タイプを手がかりに隕石中のアミノ酸の由来について考えてみたいと思います。 生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか
小林 憲正