「米軍を迎撃せよ!」…日本軍「幻の戦闘機・震電」がたどった「悲しすぎる運命」と「知られざる開発秘話」をいま明かす!
2023年11月に劇場公開され、興行収入76億円を突破する大成功を収めた「ゴジラ1.0」が今年11月1日に地上波で初放送され、再び話題となった。そこで注目されたのが日本を守った旧帝国陸海軍兵器。とりわけ、最大のサプライズが単機でゴジラに立ち向かった局地戦闘機「震電」だ。 【写真】軍事誌発「伝説の航空機本」、そのすごい中身を公開する…! 実際は、太平洋戦争末期、B29爆撃機を迎撃すべく開発されながらも実戦に臨む機会を得ないまま終戦を迎えたことから「幻の戦闘機」とも呼ばれている。この戦闘機を大特集して完売となった老舗軍事雑誌「丸」3月号(現在は電子版のみ)から一部抜粋・再構成して、「幻の戦闘機」の知られざる開発物語をお届けしよう。
従来にない「エンテ型機」、内部から不安視する声も
太平洋戦争当時の単葉単発機は、胴体の先端にプロペラとエンジンがあり、その後ろに最大の揚力を生む主翼が据えられ、胴体の最後部に垂直尾翼と水平尾翼を備えている。 そして前方のプロペラを回して、空気を後ろに向けて強く送り出す「牽引力」によって飛行するのが普通だ。 だがこの従前の配置を見直して、機首に水平尾翼に代わる前翼を取り付け、主翼は胴体の後部に配し、エンジンを胴体の後端に置いてその後ろでプロペラを回すことで得た「推進力」によって飛行する設計が発案された。これがエンテ型機である。エンテとはドイツ語で鴨のことだ。 しかし当初は、エンテ型機は従来にはなく、しかも諸外国でも実用化されていない形態の航空機であるがゆえ、実用上なにか未知の問題をはらんでいるのではないかと危惧する声も内部から聞かれた。空技廠では、1943年8月に風洞を用いたエンテ型機の空力実験を実施。戦局の悪化や研究・開発の順位などもあってなにがなんでも最優先というわけではなかったが、44年1月にはMXY6(エンテ型機実験用の小型滑空機)による滑空テストも成功裡に終わり、基礎的な研究がまとめられて、いよいよエンテ型機の実機の設計・開発へと進める状態となった。