古代ローマの特大モザイク画をトルコで発見。サイズもモチーフも「国内初」
トルコ東部で古代ローマ後期の大規模なモザイク床が発掘された。きっかけとなったのは、ある農家が果樹園にサクランボを植えようとしたことだった。考古学研究者たちによると、90平方メートル近いこのモザイク画は、トルコ国内で見つかった同種のものとして最大だという。 【写真】2024年の考古学的大発見ベスト10 3世紀後半のものとされるモザイク床が非常に良好な状態で発見されたのは、トルコの首都アンカラから東に約480キロのエラズー県サルカヤ村。何百年もの間、50cmほどのやわらかな表土に覆われていたモザイク画は、エラズー県立考古学民族学博物館の監督下で発掘が進められていた。調査担当の主任考古学者、エムレ・チャユシュは貴重な発見についてこう説明する。 「全体の規模としても、描かれている動物についても、今に残るモザイク画としてはトルコ初。動物は全て、かつてこの地で見られたものです。トルコにはほかにも大規模なモザイク画があるものの、そこに描かれているのは幾何学模様や神話的な題材です」 「サルカヤ・モザイク」と呼ばれるモザイク床には、珍しいアナトリアヒョウのほか、ライオンがヤギを追いかけ、ヒョウがダチョウを捕らえ、グレーハウンドに似た犬がイノシシを追い詰め、雄鹿がクマから逃れようとするなどのシーンが描かれている。一方、ザクロの木の下や、つぼみをつけたバラの茂みで休らう鳥たちなど、穏やかな場面もある。チャユシュは、このモザイク画が「営々と続く自然のいとなみを表現している」とし、こう語った。 「ライオンと熊は、ローマの伝統で権威を象徴するものです。そして狩猟犬の描写は、人間が食物連鎖の一部であることを思い起こさせてくれます。ここには、モザイク職人たちが比喩を用いてそれを伝えようとしたことが示されています」 モザイク床が発見された土地の持ち主、メフメト・エミン・スアルプがサクランボの苗木を植え始めたのは2023年で、同年9月に偶然モザイク画を発見してエラズー県の博物館に連絡。その後、発掘作業が行われ、現在は保護作業が完了している。 考古学者たちは、モザイク床の周囲、約6000平方メートルに及ぶ範囲に、浴場や礼拝所をはじめとする建物が存在した可能性、さらには玄武岩で舗装された道路や灌漑用水路、ワイン醸造用のブドウ破砕設備があった可能性もあると考えている。 トルコ文化観光省は、モザイク画を保存のために移設するかどうかは未定としているが、発見場所にモザイク床を残す複合施設の建設も1つの方法として挙げられる。エラズー県知事のヌマン・ハティポールは、発掘の過程でほかに何が発見されるかによって計画の方向性が決まると述べた。