食べ物のことが頭から離れないぐるぐる思考「フードノイズ」、専門家がすすめる止め方は
フードノイズを感じやすい人
誰でもフードノイズを経験する可能性はあるが、過体重または肥満の人はそうでない人よりもフードノイズに悩まされやすい。しかも、それが減量を困難にする。 「フードノイズが過剰になると、人はそれに対処しようとします。つまり、食べてしまうのです」と、チェスキン氏は指摘する。 実際、2015年12月に医学誌「Obesity Reviews」に発表された研究では、食物手がかりに対する反応性が高まっていると、食欲が刺激されて摂食行動を促し、体重の増加につながりやすいことが明らかになった。 さらに、2024年に米ダイエット企業ウェイトウォッチャーズと米ジョージ・ワシントン大学に拠点を置く肥満防止のネットワーク、ストップ・オビシティ・アライアンスが米国での調査結果をまとめた報告書では、「過体重または肥満の人の半分以上がフードノイズを経験している」と指摘する。そしてその多くが、フードノイズのせいで健康的な食事計画や運動管理を続けるのが難しくなっていると訴えたという。 ほかにも、摂食障害を抱えている人、食事のパターンが不規則な人、食べ物に関してたくさんのルールを設けている人、ダイエットしたりやめたりを長年繰り返している人も、フードノイズを感じやすい。 2024年2月号の医学誌「Appetite」に発表された研究では、「オルトレキシア」と呼ばれる摂食障害を抱えている人の間で、フードノイズの経験者が多いことが明らかになった。オルトレキシアの特徴は、健康的な食生活や食品の安全に異常なこだわりを持ち、厳しい食のルールを自らに課すといった行動だ。
薬で思考プロセスに働きかける
オゼンピックやウゴービのようなGLP-1受容体作動薬を投与された患者の多くが、フードノイズが減ったと報告している。その背後には、どのようなメカニズムがあるのだろうか。 これらの薬は、「空腹感や食欲に関連する脳と消化管の受容体に働きかけ、摂食行動の引き金となるものの一部に影響を与えます」と、チェスキン氏は説明する。 また、GLP-1薬はフードノイズを弱めるような形で脳内報酬系にも影響を与えている可能性がある。GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、体内に自然にあるホルモンで、血糖の調節、食欲、消化の働きに関わっている。 「GLP-1受容体は、視床下部や報酬中枢など、脳のいたるところにあります」と、クシュナー氏は説明する。フードノイズに関しては、「薬が複数の受容体に働いて、他の思考や感情を締め出そうとする信号の連続放出を防ぎます」という。 言い換えれば、「脳のなかのドーパミン報酬経路を阻害することによって、食べ物に関する異常な思考プロセスをも阻害するわけです」と、クリーブランド・クリニックの肥満・代謝研究所の肥満医学部門長W・スコット・ブッチ氏は言う。 2024年10月16日付で医学誌「Addiction」に発表された論文では、GLP-1受容体作動薬が依存症患者にも効く可能性があることが明らかにされた。アルコール使用障害を抱えている人がこれらの薬を使用すると、酩酊するまで飲む確率が50%減り、オピオイド依存症患者の場合も、オーバードーズ(過剰摂取)が40%減少したと報告されている。