和田秀樹「褒める・叱る」子どもの未来を育むバランスの妙 子どもにとって最もよくないこと・辛いことは
行動を止められたり、禁止されたりすることが増えれば増えるほど子どもは萎縮してしまいますから、子どもが小さいうちは、できるだけ自由に行動させることが大切です。 では、幼児期はまったく叱らない方がいいのかと言えば、そうではありません。 やはり人としてやってはいけないことに関してはきちんと叱る必要があります。 たとえば、命に関わるようなことや危険なことをした時、人に危害を加えた時など、やっていいこととやっていけないことを教えるために、周りの大人はしっかり叱らなければいけません。
しかし、幼児期には「自分は親から愛されている」という実感を子どもに持たせることがもっとも重要です。普段から自分が親から愛されているという実感を持っている子どもは、親から叱られた時にも自分が悪かったことを素直に認められます。 しかし、親に叱られてばかりいる子どもは「お母さん(お父さん)は、きっと自分のことが嫌いだから叱っているんだ」と感じてしまうことがあります。そして叱られても、「親は自分のことを思って叱っている」という気持ちにはなれず、ただただ不快で、苦しい思いをするだけになってしまうのです。
やはり子どもの教育においては、あくまでも親の愛情を与えることを優先すべきだということです。 特に、周囲の目を気にして、あるいは周りに合わせるために子どもを叱るのはよくありません。 よく見られるのが、子どもの個性が大事などと言いながら、周りに合わせた行動ができない子どもを叱る親です。 子どもにしてみれば、それはダブルバインド(言葉に出しているメッセージと裏にあるメッセージの間に矛盾がある二重拘束状態)に感じます。親はたいして意識せずにやっていることでも、子どもはそうした矛盾を敏感に感じ取って不信感を抱くため、賢明な教育とは思えません。
また、私から見れば、日本の親には過剰に恐れ過ぎている人が多いと思っています。 親自身が周りに嫌われたくないとか、世間から浮きたくないとか、親の教育が悪いと思われたくないなど、いろいろなことを先回りして不安に感じてしまう人が少なくありません。 ■子どもの好きにさせてあげてもいい たとえば日本の社会では、小さな子どもが電車内で大声を出したり、幼稚園や保育園で先生の言うことをおとなしく聞けなかったり、列にきちんと並べないことなどを問題視して、「親のしつけがなっていない」と言われますし、親たちも非常に気にしています。