渡辺恒雄さん、「たかが選手が」以降も取材拒否などせず もともと政治部の敏腕記者【追悼】
読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡辺恒雄氏が19日午前2時、肺炎のため、東京都内の病院で死去した。98歳だった。葬儀は近親者のみで営まれ、お別れの会が後日開かれる予定。プロ野球・巨人のオーナーを1996年から約8年間務め、球界にも大きな影響を与えた。 【悼む】 2004年に巨人担当となり、渡辺恒雄さんを何度も取材した。当時はチームが低迷してくると、試合はそっちのけ。ナイターが始まるころに東京ドームを離れ、取材スポットのホテルに渡辺さんを探しにいき、酒席からの帰りを直撃した。 最も印象深いのは、同年7月9日の「たかが選手が」発言だ。球界再編騒動の真っただ中。当時の古田敦也選手会長がオーナー陣との対話を求めているといったニュアンスの質問に「無礼なことを言うな! 分をわきまえないといかんよ。たかが選手が」と返したのだ。「たかが選手だって立派な選手もいる」とフォローもしたものの「(選手が)オーナーと対等に話す協約上の根拠は一つもない」と、キツい言葉を重ねていた。 その時「すごいことを聞いちゃった」と思ったものだが、この発言は物議を醸すどころか、とてつもない大騒動に発展し、12球団制が維持される一つのきっかけになった。いま振り返っても、歴史的な場面に遭遇したのだなと思う。 ただ渡辺さんは、これだけのことがあっても、その後も基本的に取材拒否などしなかった。もともと政治部の敏腕記者。夜回りする記者の心情を思ってくれたのかもしれない。とにかく器の大きな人だった。(2004年~09年、21年~巨人担当・井上洋一)
中日スポーツ