ノーベル賞級成果「関西発の新素材」実用化へ
都市ガスが整備されていないインドネシアで今月から、ガスの運搬にキュビタンを使用する実証実験を本格的に開始する。未活用のメタンガスを利用でき、輸送にかかる二酸化炭素(CO2)排出の削減効果も期待できる。最高経営責任者の浅利大介さん(49)は「エネルギー問題の解決に貢献できる」と話す。
MOFの実用化で今後、有望視されているのは、温室効果ガスであるCO2そのものの回収・利用だ。
大阪ガスのエネルギー技術研究所(大阪市此花区)は、大気中からCO2を回収する試験機を製作。アミン化合物とMOFを組み合わせた吸着剤でCO2を回収し、さらに水素と化学反応させることでメタンを生み出すことを狙う。
MOFを使えば、CO2をより多く吸着でき、少ないエネルギーで取り出せる可能性がある。昨年9月から研究所内での実験を開始。同研究所の田中琢実さん(53)は「2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、実用化を目指したい」と語る。
車部品計画
ノーベル賞級とされるもう一つの新素材は、大阪大の原田明・特任教授(75)が1992年に報告した超分子「ポリロタキサン」。リング状の化合物にひも状の高分子を通した構造で、リングが滑車のように柔軟に動く「しなやかさ」が売りだ。
繊維・化学メーカーの東レ(東京)は2021年、樹脂にポリロタキサンをナノレベルで混ぜ込んだ新たな材料を開発したと発表。熱などによる伸び縮みに強く、自動車内部の部品として使われる計画で、同社の小林定之・化成品研究所研究主幹・リサーチフェローは「スポーツ関連や家電にも活用例を広げたい」と意気込む。