新築なのにこんなにもヴィンテージ感を演出できる!デザイナーが手掛けたカナダのファームハウス
「すべて投げ出して、田舎暮らしを始められたら…」。都会暮らしに疲れ、夜ふけに不動産情報など始めてしまうと、そんな妄想が止まらなくなってしまいます。トロントを拠点とするデザイナーのアリソン・ウィルソンは、これを実行に移しました。「夫と私は何年もの間、ファームハウスを建てられるような土地を探していました」とアリソンは振り返ります。その苦労が報われたのは、ほぼ手つかずの約20.23ヘクタールの土地を見つけたとき。トロントから車で2時間ほど、ジョージア湾を見渡すエリアです。「かつてここには、馬を飼う年老いたドイツ人の男性がいました。彼は、あたりを通っていた鉄道の枕木を使い、納屋を建てたそうです」 【写真集】新築でヴィンテージ感を演出。デザイナーが手掛けたトロントのファームハウス
アリソンと夫は、おとぎ話に出てきそうなエピソードをもつこの土地にエアストリーム(キャンピングトレーラー)を停めて泊まり込み、「夢の家」の設計を始めました。 「冬には太陽がどの位置にあるのか、夏にはそれがどうなるのか。それから、家を建てたいと思っている場所に風はどう当たるのか。そんなことを知るためにこの土地で長い時間を過ごしました」と彼女は振り返ります。 「池をいくつか見つけたり、敷地内を通っていた小道を切り開いたりして、美しい場所に仕立て上げました」 2人は建築家の故ジェームズ・ピアソンと、密接に協働しました。ゆずれなかったのは、周囲の風景になじむような色濃い自然を室内にも取り込むこと。 ジェームズが用意していた設計プランは細長く、直線的でした。それに対してアリソンは「サイズは小さくても、もっと親密で居心地のいい」住まいを望んでいました。 彼女は、当時のことをこう明かします。「だから、長いラインをある地点で切り、U字型に曲げたんです。そうすれば、家の端がもとの位置に戻るでしょう?」
家族が好んで集う場所のひとつが、キッチンです。 ここでは、無垢のオーク材を使った梁と、ジャルダン・ドゥ・フランスで選んだヴィンテージペンダント・ランタン、それからホワイトオーク材のキャビネットが、絵本の場面を思わせる雰囲気をつくり上げています。岩を割ったような質感に仕上げたライムストーンの壁も、この家に新築とは思えない風格をもたらしています。 「建築家のジェームズはよく、家の一部を見ては、冗談めかして『あれ?ここは昔からあった石づくりの家だっけ?』なんていっていました」とアリソン。