「秋だけのイメージ覆したい」 カボチャに魅せられ専門店を開業した宮本雅代さん TOKYOまち・ひと物語
毎年、10月に向けて各地の洋菓子店にカボチャを使用した期間限定スイーツが並ぶ「ハロウィン商戦」が終了した。そんな中、東京都世田谷区若林にある「カボチャ」は年間通してカボチャスイーツのみを販売する異色の洋菓子店だ。店頭に立つ宮本雅代さん(50)は、カボチャを主食にするほどの「生粋のカボチャ好き」で…。 【写真】カボチャをふんだんに使用したスイーツが並ぶショーケースの様子 ■パティシエで挫折 出合いは幼少期。祖母の作るカボチャの煮物が食卓によく並び、雅代さんは甘過ぎず、やや塩味が利いたそれが大好きだった。高校卒業と同時に一人暮らしを始めると、「おなかいっぱいになれる」とカボチャを主食にし始めた。「いつかカボチャの専門店を出したい」。そう思いながらも、幼いころからの夢だったパティシエを志し、ケーキ店に就職した。 ここで雅代さんは思わぬ問題に直面する。「いざ働いてみると、生クリームが嫌いだったり、フルーツが苦手だったり…」と、ケーキの具材のほとんどが口に合わなかったのだ。また「甘いものは好きだけど、カボチャのような〝自然な甘み〟とはどこか違うと感じた」。 結局わずか3年ほどでケーキ店を退職し、その後はパン店、カフェと職を変わった。それでもカボチャ専門店を開く夢は諦めずにいた。 ■当初は閑古鳥 ある日、カフェで「カボチャのチーズケーキ」を自作したところ、客から絶賛された。そこで、「世間の人もみんなカボチャ好きなんじゃないか」と勘違いして、専門店出店の決意を固める。 だが当時カフェで知り合い結婚した夫の香二さん(46)から、「そこまでのマニアは少ないし、変わった店で終わってしまう」と特化することに反対される。結局、カボチャを主張しつつも、ショートケーキなど万人受けする商品も並べ、平成18年にその名もずばり、「カボチャ」を開店。「後々専門店にしようとは思っていたし、何より覚えてもらいやすい」と思い切った。 当初は客もまばら。「2人で食べていけないくらいで、アルバイトに行っていた時期があった」と振り返る。しかし2度の転機を経て人気店へと変貌を遂げていく。 ■ハロウィン定着