「あまちゃん」登場〝南部ダイバー〟の父 憧れる息子に「継いではいけない」 導き出した将来の夢
ダイバーも医師も、1人では仕事ができない
元勝さんは今も、現役でホヤを取り続ける。 南部もぐりで漁を続けるのは、弟の司さんと2人になった。 医師を目指す息子に伝えたい。 1人で海深く潜っていく南部ダイバーは、勇敢に見えるかもしれない。 でも忘れちゃいけない。 船上では常に、空気を注意深く送り続けてくれる船員や、命綱を握りしめてくれている仲間がいる。 「父さんはいつも、誰かに支えられて仕事をしているんだ」 医療現場も同じだと思う。 看護師や技師に支えられているからこそ、医師は十分な治療ができる。 1人では仕事ができないことを忘れるな。 「僕がそんな、身勝手な医師になるわけないじゃないか」 貴文さんは弘前で笑う。 今だって「医師と南部ダイバーのどちらかを選べ」と言われれば、迷ってしまう。 それほど父の職業に憧れていた。 「いつか父さんみたいな、無言で語れる人間になりたい」 貴文さんは誓う。 「それまでは、伝説の南部ダイバーの息子なんだという誇りをもって、病に苦しむ患者さんたちに向き合っていくよ」 (2023年6月、10月取材) <三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した>