ジャガーの「猫殺し」は、プロモーション依存のブランディングの終焉を示している
この記事は、ベストセラーとなった『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者で、ニューヨーク大学スターン経営大学院の経営学者であるスコット・ギャロウェイによる連載「デジタル経済の先にあるもの」です。月に2回お届けしています。 【画像】ジャガーの「猫殺し」は、プロモーション依存のブランディングの終焉を示している 長年昏睡状態にあったブランド、ジャガーが目を覚まそうとしている。だが、その呼吸は苦しげだ。「Copy Nothing(何も模倣しない)」をうたった、車が一台も登場しない発表映像※1。アート・バーゼル・マイアミで披露されたピンク色のEVコンセプトカー。これらの試みは、当然のように嘲笑の的となった※2。 イーロン・マスクの「We Robot」イベントと肩を並べる、2024年の「派手なだけで中身のない」製品発表会の代表例となったのだ。確かに、マーケティングキャンペーンで重要なのは注目を集めることだ。その意味では、まあ成功したと言えなくもない。 ジャガーとランドローバーの親会社、タタ・モーターズは、ジャガーの残されたブランド価値をさらに毀損することにも見事に成功を収めた。象徴的なロゴを捨て、現行モデルをすべて打ち切り、スピード、パワー、優雅さという伝統の約束までも放棄したのだ。 そのかわりに何が導入されたか。没個性な新ブランドマーク、量産の見込みすらないコンセプトカー、そして「魅力的な人々、鮮やかな色彩、奇抜な髪型」という、何を言いたいのか理解に苦しむ空虚な約束だけだ。 この一件は、間違いなくハーバード・ビジネス・レビューのケーススタディの教材になるだろう。すでに様々な議論が巻き起こっている。そのなかには、「ジャガーがウォークになった」という、お決まりの文化戦争的な戯言も混じっている。 だが、これらの議論の多くは核心を外している。ジャガーの今回の動きが示唆しているのは、もっと本質的な事実だ。ブランドの時代が、終わりを迎えたということだ。