J1復帰の湘南ベルマーレ監督と清宮パパの意外な友情の絆
おもむろにスマートフォンをオンにして、ショートメールを送った。 「ALIVEという言葉、使わせてもらってもいいですか」 年明け早々にこんな文面を綴ったのは湘南ベルマーレを率いて、2年ぶり4度目となるJ1の戦いに挑む曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(49)。受け取ったのはラグビートップリーグ、ヤマハ発動機ジュビロを率いる清宮克幸監督(50)だった。 ほどなくして「光栄です。ぜひ使ってください」と返信が届いた。決意を新たにした曹監督は、日本語で「生き生きとしている」と訳される英語の『ALIVE』を、今シーズンのチームスローガンとすることを決め、18日に平塚市内で開催された新体制発表会見で披露した。 曹監督と『ALIVE』の接点は、ベルマーレユースを指揮していた10年前にさかのぼる。清宮監督が当時率いていたトップリーグの強豪、サントリーサンゴリアスの選手たちがプレー中に「アライブ、 アライブ」と連呼しているのを偶然にも知った。 「プレーを途切れさせずにボールを生かす、常に前へ向かってボールを運んでいくスローガンがサントリーに浸透しているんだと、外から見ていて思った。あのシーズンのサントリーはすごく強かったこともあり、僕自身、その言葉がずっと忘れられなかった」 そして、曹監督と清宮監督の出会いは、元号がまだ昭和だった1987年春へとさらにさかのぼる。京都府立洛北高校から早稲田大学商学部に入学した曹は、サッカー部であるア式蹴球部に入部。当時は保谷市(現西東京市)東伏見にあったグラウンドでボールを追った。 隣接しているラグビー部のグラウンドでは、2年生ながら圧倒的な存在感を放っている選手が視界に飛び込んできた。ルーキーイヤーからナンバーエイトなどで活躍していた、教育学部の清宮だった。 「当時からオーラがあったし、リーダーシップだけでなく、独特の人生観というものももっていた。あの時点で、この人は将来的に必ず指導者になると思いましたから。ア式蹴球部とラグビー部の寮も隣同士だったこともあり、喫茶店とかでいろいろな話をしたことも覚えている」 1987年度のラグビー部は大学選手権を制し、日本選手権では東芝府中も撃破。現時点では最後となる、大学チームによる日本選手権覇者となった。1989年度には清宮はキャプテンとして卓越したリーダーシップを発揮し、再び大学日本一の座へラグビー部を導いている。 隣のグラウンドに強烈な残像を残して清宮はサントリーへ入社し、現役引退後の2001年から母校・早稲田大学の監督に就任する。一方で1991年春に日立製作所(現柏レイソル)へ入社した曹は、浦和レッズをへてヴィッセル神戸で1997年をもって引退する。 ドイツなどの海外生活をへて、2000年に川崎フロンターレのアシスタントコーチに就任。指導者の道を歩み始め、2005年からは湘南ベルマーレの一員となったなかで、競技の垣根を超えた清宮との親交は続いていた。