「年収200万円台」が当たり前…60~70代「働く高齢者」の意外と知らない「収入実態」
年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。 【写真】意外と知らない、日本経済「10の大変化」とは… 10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
意外と知らない「定年後の年収」
まず、定年後の年収はいくらなのだろうか。 国税庁「民間給与実態統計調査」によれば、2019年の給与所得者の平均年収は436.4万円となっている。 この調査には、国内で働くすべての給与所得者が含まれており、フルタイムで正社員として働く人はもちろんパート労働者なども含まれた数値となっている。 給与所得者の平均年収は、20~24歳の263.9万円から年齢を重ねるごとに右肩上がりで上昇し、ピークを迎えるのが55~59歳の518.4万円となる。 そして、多くの人が定年を迎える60歳以降、給与は大きく減少する。平均年間給与所得は、60~64歳には410.7万円、65~69歳では323.8万円、70歳以降は282.3万円まで下がる。 図表1-1では、現在の年齢区分で比較可能である最も古い年次である2007年における平均年収も記している。 定年後の就業者について、2007年当時の給与水準と比較すると、はっきりと上昇している年齢区分は存在しない。 高齢者人口の増加や労働参加の促進によって高年齢者の就業者数は増えていることから、厳密にいえば高い収入を稼ぐ人の絶対数も徐々に増えているとは考えられるが、まだまだ定年後の就業者の平均的な収入水準は低いといえそうである。
給与額の平均値
この調査が集計しているのは、民間給与所得者でかつ1年間を通して就業している人の給与額の平均値である。 現役世代の収入については給与所得者のデータで概ねその全体像がわかるが、高齢就業者は自営業者であることも多く、サラリーマンとして給与を得る人はそこまで多くない。 定年前後以降の年収分布をより仔細にみるために、また自営業者を含む就業者全体の給与を調べるために分析を行ったものが上図となる(図表1-2)。 ここからも、定年以降は年齢階層が上がるにつれて所得が徐々に低下していく様子が確認される。 60歳以降の就業者全体の年収分布をみていくと、60代前半では平均収入は357万円で、上位25%所得は450万円、収入の中央値は280万円となる。60代後半に目を移すと平均額は256万円まで下がり、上位25%所得は300万円、中央値が180万円まで下がる。 定年後の就業者の収入の実態を探っていくと、300万円以下の収入の人が大半であることがわかる。 また、収入の平均値やその分布は、就業者を分母として算出される。このため、当然であるが非就業者は算定の対象外になる。定年後は非就業となる人、つまり収入がゼロになる人が多くいるため、高年齢者全体である程度の収入を得る人は非常に少ないというのが実情ということになる。