10代の頃から漫画を語り合っていた――亡き親友の大作「ベルセルク」を完結に導く漫画家・森恒二の信念
森は理詰めで考えたくなるタイプだが、三浦は逆だったという。 「三浦は割とふわっとしてるんですよ。物語上重要な“髑髏の騎士”がいますけど、最初、別に設定はなくて、かっこいいから出したっていうんです。その後2人で話していると、髑髏の騎士の役割が行ったり来たりするんですよ。でもあらゆるピースがはまって、最終的にはちゃんと、うそみたいな帰結の仕方をするんです。天才ならではですよね。 その分、自分は戦いの戦術を考えて、ここから移動する旅に7日はかかるよねという計算をして、三浦の役に立ててたと思います」
私は「三浦原理主義者」である
再開版の役割分担について説明してもらった。 「月に一度、数話分の打ち合わせをします。三浦から聞いていた内容を編集担当にあらためて確認・すり合わせをして、編集部に残された資料やメモをもとに全体的なストーリーを決めます。それをスタジオ我画の黒崎チーフが絵コンテ(下書き)にまとめ、三浦が話した通りに進んでいるか確認させてもらう。あとはスタジオ我画が責任をもって仕上げてくれます」 三浦が描いた膨大なカットをキャプチャしたり、生成AIを下書きに活用したりすることも議論した。しかし、今回のプロジェクトにはまだ活路を見いだせず、従来の作画法で進めることとなった。 「監修だけなので私の負担はそれほど多くはないんです」と話す森だが、たとえ漫画として欠けている要素があっても決して足さないと決めたという。 「私は三浦の親友であると同時に、その才能と作品を崇拝する“三浦原理主義者”でもある。天才漫画家の足跡を後世に残すため、漫画家・森恒二の個性や考えは一切反映しない。 スタジオ我画のスタッフは、すでに一流の漫画家として一本立ちできる腕とアイデンティティーを持っています。それだけに、三浦のタッチからごくわずかでも離れていると感じた部分は、心苦しいんですが、三浦の作風に寄せ直してもらうよう依頼しています」