<ブラック・ジャック>令和に新発見 幻の原稿発掘の裏側
手塚治虫の名作マンガ「ブラック・ジャック」の“幻のオリジナル版”などで構成される「ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ」(立東舎)。2023年11月に発売され、4950円と高額ながら、発行部数が1万部を突破するなどヒットした。同書に続き、初出時にカラーページで発表されたエピソードなどを集めた「ブラック・ジャック ヒストリカル・カラー・ピーシズ」(同)が11月15日に発売されることになった。奇跡的に発掘された資料も多数掲載されることもあり、新刊も話題になりそうだ。「ブラック・ジャック」は、1973~83年に「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)に連載された。これまでも関連書籍が多数刊行されており、今さら新発見はなさそうなものではあるが、連載終了から40年以上たった令和の時代に“幻”の“ミッシングピース”が発見された。同書の制作に関わった手塚プロダクションの資料開発部の田中創さんに発掘の裏側を聞いた。 【写真特集】令和に新発見 「ブラック・ジャック」幻の原稿も 写真を一挙に
◇散らばった断片
手塚は、雑誌に連載された作品がコミックス化される際、大きく手を入れることで知られている。コミックスが版を重ねたり、形態が変わったりした際にも手を入れることがある。つまり、さまざまなバージョンが存在し、「ブラック・ジャック」の場合は、エンディングが全く違うエピソードもある。「ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ」では、今回初めて連載時の“幻のオリジナル版”を復刻した。
手塚は多作だったこともあり、その生涯で15万枚描いたといわれ、現在、手塚プロダクションが保管している原稿などはおよそ10万点にもおよぶ。作品別に保管しているが、膨大なこともあり、資料が紛れてしまっていることもあるという。ほかの作品の資料の中から“ミッシングピース”が偶然、発見されることもある。また、出版社で発見され、返却されることもある。
今では信じられないことだが、手塚はファンレターの返信に原稿を添付することもあったという。雑誌に掲載されたカラー原稿は、連載当時に発売されたコミックスに掲載されることがなかったので、気前よくファンに渡してしまうことがあったのだ。仕事場の見学に来たファンに資料をプレゼントすることもあったといい、手塚がファンを大切にしていたことが分かる。手塚直筆となれば、文化的、歴史的な価値も大きいが、今とは時代が違って、重視されていなかったのだろう。