<ブラック・ジャック>令和に新発見 幻の原稿発掘の裏側
つまり、貴重な資料の一部は散らばってしまっている。「ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ」「ブラック・ジャック ヒストリカル・カラー・ピーシズ」は、失われた断片を発掘、再構成することで、令和の時代に“幻のオリジナル版”を復元した。
◇オリジナル版は何が違う?
「ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ」では、オリジナル版とコミックス版を見比べることで、“マンガの神様”とも呼ばれる手塚の創造性、独創性の一端に触れることができる。では、何が変わっているのだろうか?
「手塚は直しが多いマンガ家です。構成が大きく変わっていることもあります。コマを組み直したり、足したりして、エンディングが変わっていることもあります。セリフを変えることもあります。テレビネタなど古くなったネタを変えたり、時代背景によって病名、言い回しを変えていることもあります。変えることは悪いことではないのですが、オリジナル版は連載当時の空気感、風俗を知ることができるので、それ自体に資料的な価値があると思います」
コミックス版は、オリジナル版を基にコマを切り貼りしたり、修正したりしているので、オリジナル版の原稿は失われてしまっている。復刻する際は、掲載誌を見ながら、パズルのように原稿を組み直す。コマなどが見つからなかった場合は、雑誌をスキャンすることになる。
「立東舎の復刻シリーズの場合、組み直す際の原稿(設計図)を新たに作り、それを基にOffice ASK(オフィスアスク)さんがレストアをしていきます。雑誌からスキャンする際、インクがにじんでいたり、線が裏写りしたりしているので、修正しながら復元します。同社の技術が素晴らしいので、復刻できていますが、実はすごく手間がかかっています。『ブラック・ジャック』の既刊は全て手塚が手を入れた単行本用の原稿を使っているので、意外にもこれが初のオリジナル版なんです」
◇奇跡的に発掘された資料も