「窓際」だった明徳義塾の9番打者 値千金の適時打で四国大会V貢献
(4日、高校野球 秋季四国大会決勝 明徳義塾5―3高松商) 明徳義塾の松井萊翔(らいと)は静かに燃えていた。前日3日の準決勝で、3番を任されながらも3打数無安打。決勝のこの日は、打順を下げられて9番右翼で先発出場した。監督からの叱咤(しった)激励に「今日は絶対に打ってやる」。 【写真】昨年、U18W杯で高校日本代表を率いた馬淵史郎監督は低反発バットでの戦い方で「野球は絶対、面白くなるよ」と言う。その理由とは……。 三回の第1打席は1死二塁で二ゴロに倒れたが、四回の第2打席は5番打者からの4連打の波に乗り中前へ適時打を放った。 極めつきは1点差に迫られた六回2死三塁での打席だった。 147キロの直球を見逃した後の2球目、144キロをファウル。相手の球威に押された。 その時、ふとベンチを見ると、馬淵史郎監督が声を張り上げていた。「(指を)もう1本分、(バットを)短く持て」と。 助言を元にバットを短く握り直した。低めの直球を2球見極め、5球目。真ん中低めの145キロをたたき、中前適時打にした。「ほっとしました」と松井。馬淵監督は「値千金でしたね」と褒めてくれた。 今夏の全国選手権で、松井は2年生ながら背番号12をつけてベンチ入り。全2試合で1番中堅で先発した。10月の国民スポーツ大会(佐賀)も、3年生とともに出場し、優勝に貢献した。大舞台を経験しているからこそ、期待され、評価も厳しい。 打順降格も期待の裏返しだった。この日の3安打2打点の結果に、馬淵監督は「あれぐらいやってくれんとね」と言いつつ、「窓際から、また元に戻ったな」と独特の表現でたたえた。 4年ぶりに四国大会を制し、20日に始まる明治神宮大会は、もちろん頂点を狙う。松井は「(打順は)何番でもいい。安打でつないで、点を取るだけ」と力強く言った。(大坂尚子)
朝日新聞社