米を震撼させたフリント水質汚染 「環境レイシズム」は格差社会の象徴か?
米自動車産業の衰退と共に、深刻な人口減少と市の財政難に直面したミシガン州フリント。数々のドキュメンタリー映画で知られるマイケル・ムーア監督の故郷でもあるフリントは人口の過半数が黒人で、市民の約25パーセントが貧困ラインを下回っています。財政問題の解消を図る目的で、フリント市当局は2014年4月から近隣のフリント川の水を水道水に使用したものの、鉛による深刻な水質汚染が発覚。水質汚染をめぐる行政の対応にも批判が噴出するなか、フリントの水質汚染は政治問題へと発展しています。
経費削減でフリント川の水を使用し始めたが……
フリント水質汚染の経緯について少し説明しておきましょう。ミシガン州デトロイトの北西約100キロに位置するフリント市は、1960年代前半にデトロイトの北にあるヒューロン湖(五大湖の一つ)から水道水を運ぶためのパイプライン建設を試みましたが、建設計画は頓挫し、代わりにヒューロン湖の水をデトロイト市から購入するという選択をしました。1967年以降、フリントは全ての水道水をデトロイトから購入していました。しかし、景気の停滞とそれに伴う市の財政難を理由に、2014年4月にデトロイト市からの水道水購入を中止し、水源を町の近くを流れるフリント川に変更したのです。 フリント市民が口にする水道水の水源がヒューロン湖からフリント川に変更されてから間もなくして、蛇口から出る水が黄色く変色し、異臭を放つという苦情が市民から相次ぎました。さらに体調不良を訴える市民が相次いで出たにもかかわらず、ミシガン州の保健当局はフリントで使われている水道水の水質は問題なしとの判断を下し、市民からの訴えは事実上黙殺されてきました。 転機が訪れたのは昨年9月。子供の血液から鉛を検出したバージニア工科大学の水質調査チームがフリント川の水を使用すべきではないとの見解を発表。それを機に鉛の含有率が非常に高いフリント川を水源とする、フリント市の水道水に関する問題点もクローズアップされ、1月5日にはスナイダー・ミシガン州知事がフリントのあるジェネシー郡に、16日にはオバマ大統領がミシガン州に対して「非常事態宣言」を行い、水質汚染の影響下にある地域の支援に公的資金が投入される運びになりました。