【広島】プロ野球史上初の屈辱も…あの頃の感覚も垣間見えた激動の1年間 プロ野球12球団担当記者が見た2024年
思い出されるあの頃の感覚 優勝を知るベテランと夢見る若鯉の台頭
後半戦の始まり。 オールスターゲームが終わり神宮での3連戦を終え本拠地に戻ってくると、そこから24年最長となる7連勝を挙げた。 投打がかみ合っていた。 打線が先制すれば中継ぎ陣はその先制点を守りきり、先発が無失点に抑えていれば、なんとか1点をもぎ取った。 8月6日~14日にかけて行われた真夏の厳しい9連戦も勝ち越した。 その中でも8月14日のピースナイターは印象に残っているファンも多いだろう。 菊池涼介: 「今日は特別な日なのでこういう形で終われて本当に嬉しいです」 2点ビハインドで迎えた9回の、菊池涼介(34)の劇的な逆転サヨナラスリーラン。 懐かしい光景が広がった。 ホームベースを踏んだ瞬間の、“お兄ちゃん”と慕う新井監督(47)との抱擁。 それはまさに3連覇を果たした頃、選手時代の新井と抱き合う光景そのものに見えた。 この頃のカープにファンは感じていただろう。優勝したあの頃のように“相手に先制されても逆転してくれる気がする”という感覚。 そしてその菊池を師と仰ぐ矢野雅哉(26)の台頭も大きかった。 アッと驚くような高い守備力を武器にプロ4年目でショートのレギュラーを奪取。菊池と鉄壁の二遊間コンビを組んだ。 そして4年前の入団会見で「必ず取ります」と語ったゴールデングラブ賞を獲得した。 打撃では初の規定打席に到達。 8月31日に24年1号となるHRを放つと、翌日にはランニングホームランを放ち、新井監督はベンチで爆笑した。 【2024年成績】 矢野雅哉 打率.260 2本塁打 38打点 13盗塁 この次の試合から悪夢が始まることになるとは、まだ誰も思っていなかった。
届かなかったあと一歩 冷めやらぬ悪夢の中の苦しみ
9月最初の6連戦を1勝5敗で終えた。 気がつくと首位の座を巨人に明け渡し、ゲーム差1で本拠地の3連戦を迎えることになった。 首位の座奪還をかけた大事な巨人との3連戦初戦。 マウンドに上がったのは2021年から12戦連続で巨人戦での黒星がない、通称“巨人キラー”の森下暢仁(27)だった。 「いいパフォーマンスを出せるように」と意気込んで臨んだ試合だった。 しかし初回からホームランを浴びるなど嫌な流れを断ち切れず、初戦を落とした。 ゲーム差2で迎えた2戦目、もう負けは許されない。 アドゥワ、ハーンが8回を無失点リレーでつなぎ、2点リードで迎えた9回。 いつものように、栗林良吏(28)が抑えて勝利。 …するはずだった。 先頭の代打・中山礼都に四球を与えると、続く丸にも四球、そして坂本に左前打を浴び、24年シーズン初のノーアウト満塁の状況を作り出すと、押し出し死球、タイムリー、押し出し四球で逆転された。 試合後語ったのは「なんで制球を乱したかも分かっていない」。 絶対的守護神が崩れた。 流れを呼び戻せなくなったチームは、週に1度しか勝てなくなった。 気づけば阪神に2位の座を奪われ、8月24日時点で最大8.5ゲーム差あった4位・DeNAに、ついに3位の座も明け渡した。 ファンは9月の失速にため息をついた。 前月まであった、“逆転してくれる気がする”という感覚は、“何点取っていても逆転される気がする”という感覚に変わった。 だが、その悔しさを一番感じているのは、他でもない選手たちだった。 1-4で負けていた9月22日の巨人戦。 8回裏の猛攻で4点を取り1点リードの状況になった。 そして9回、あの悪夢の6失点を喫した巨人戦以降初めて、栗林がマウンドへ舞い戻った。 あの日と同じ先頭バッターの中山をピッチャーライナーに仕留めると、続く丸をセカンドゴロに打ち取った。 そして最後は浅野を空振り三振に仕留めると、渾身のガッツポーズ。 前回対戦で挫折を味わった巨人を相手に、リベンジセーブを果たした。 そしてこの舞台の立役者とも言えるのは、8回裏に逆転タイムリーを放った末包昇大(28)。 チームを20試合ぶりの逆転勝利に導いたその時のヒーローインタビューに、ファンは心を打たれた。 末包昇大: 「もちろんチームも悔しかったですし、7回・8回、試合が終わっていない中で空席が目立って、本当に悔しいですよ。でも、それは仕方ないなと思います。そういう、応援したいなと思えるチームになりたいなと思います」 その瞳には溢れ出す思いがあった。
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