保護者対応は最初の相談から支援まで学校外の専門スタッフが担当します 全国でも珍しい奈良・天理の取り組みは成功するか
関東地方の小学校で働く教諭の山田恵美さん(仮名、20代)は採用された年、発達障害などの困難を抱える児童が複数いるクラスを担当した。授業中に私語が多く、席を立って廊下に走り出る子も。毎日先輩教員に助言を受け「明日こそ」と工夫を重ねたが、改善しなかった。 【写真】今なら言える「挑戦を」投稿で応援も おじさんアイドル歴5年の予備校講師
児童の下校後、情報共有のため保護者に電話し、授業準備にも追われて帰宅は夜遅かった。 そんな頃、教室で私物を壊されたという児童の保護者から電話があった。淡々としながらも伝わってくる怒りに、ただ謝ることしかできない。トラブルの責任は自身にも少なからずあったが「心がポキッと折れた」。その後適応障害と診断され、休職した。 文部科学省によると、2022年度に精神疾患で休職した公立学校の教員は6539人と過去最多で、山田さんのように保護者対応で疲弊するケースも多い。そんな教職員の負担を減らそうと奈良県天理市は2024年4月、小中学校などの保護者対応を一元的に担う「子育て応援・相談センター」を設置した。学校外で、相談から支援まで全て対応する取り組みは全国的に珍しい。果たして教員の働き方改善の鍵になるか―。(共同通信=佐藤高立) ※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。
▽「保護者対応が負担」8割近く 「学校行事に関わる子どもの病院代を払わずに、代金の立て替えを要求された」 「生徒同士の校外トラブルのことで、夜9時ごろから深夜1時ごろまで電話で怒鳴られた」 奈良県天理市が保護者対応への新しい取り組みを始めたきっかけの一つは、2023年秋に教員らに実施した保護者対応についてのアンケートだ。小中学校では「日常業務で保護者対応を負担に感じている」と答えた教職員が77・5%、「保護者から納得のいかない理不尽なクレームを受けたことがある」との回答も72・5%に上った。自由記述欄には、実際に受けた「理不尽なクレーム」が数多く綴られた。 市によると、2023年度に保護者対応への負担などが理由で休職・退職した教員は14人。教員の働き方改革が急務だった。 そして、並河健市長の肝いりで「子育て応援・相談センター」(愛称「ほっとステーション」)が立ち上げられた。窓口は、教員の研修を行う教育相談施設の一室にある。学習面や生活面の不満や要望に対応するのは、元校長や元園長、心理士ら専門スタッフだ。市の福祉部門や顧問弁護士も協力し、家庭内暴力などの問題にも対処する。