保護者対応は最初の相談から支援まで学校外の専門スタッフが担当します 全国でも珍しい奈良・天理の取り組みは成功するか
小野田氏は「天理市の事業は、教員にとって外部機関が後ろで支えてくれるという安心感はあるだろう」とする一方で、保護者の相談をステーションが受け付けた後、結局また学校に確認するため「伝言ゲーム」になる危険性を指摘する。「間に別の誰かが入るほど、時間がかかり、情報も錯綜する」と、天理市のやり方には懐疑的だ。 小野田氏は、学校が抱えるのが難しいときに限り、カウンセラーや法的な立場から助言する弁護士「スクールロイヤー」など外部に相談するべきだと提案する。「ほとんどの保護者は話せばわかる人。そこで信頼関係をつくることは、教員を続ける原動力にもなる」と話した。 信頼関係の構築が揺らいだとき、学校と保護者との関わりは変化しかねない。小野田氏は今後に注視が必要だと警告している。 ▽「信頼関係」の在り方も議論 天理市が打ち出した事業が報道されると、市民からも賛否の声が上がった。 批判的な意見があることについて、並河市長は「『教員が保護者対応に関わらなくなる』ということではない。状況の整理とアプローチを『チームでやりましょう』というのが大きなポイントだ」と説明する。窓口を「ほっとステーション」という外部機関に変えることで、最初から複合的な役割を一度に果たすことを意義として挙げる。
従来の対応については「学校が『子どもの不安感をどう解消するか』よりも『保護者が何を言うか』にとらわれ、根本的な解決になっていない場合が多い。福祉がサポートしなければいけない時に、教員が対応して前を向いていくだろうか」と語る。 一方で「保護者対応を学校現場から取り上げるのか」「保護者との信頼関係はどうするのか」という声も一部あると認める。市長が問いたいのは「そもそもの『信頼関係』はどういうものなのか」ということだという。「信頼関係」の在り方を議論し、抜本的な改革に力を入れたいとしている。 取り組みは始まって半年。天理市の事業は緒に就いたばかりだ。