保護者対応は最初の相談から支援まで学校外の専門スタッフが担当します 全国でも珍しい奈良・天理の取り組みは成功するか
元小学校長のスタッフ島田裕司さん(68)は「まず聞いてほしい、という内容が多い。相談は愚痴でもいい」と語る。学校に相談するかためらうような、ささいなことも話してもらえるという。 4月の開設以降、4カ月で相談は約130件。内容はいじめ、不登校、校則への疑問など多岐にわたる。学校に行き渋っていた子どもに対し、ステーションと同じ建物にある不登校の子どもらが通う適応指導教室を紹介するなど、支援につないだケースもある。 並河市長は2023年11月の記者会見で「保護者を切り捨てるのではない」と強調。教員は保護者対応のプロではないとし、ステーション開設で「教員が子どもに向き合える時間的、精神的余裕を確保する」と意気込んだ。 ▽電話のランプに今もおびえ 冒頭で紹介した山田さんは家族や友人に支えられ、1年後に復職できたが、苦情への不安が消えたわけではない。職員室の固定電話は電話がかかって音を立てる直前、ランプが赤く点滅する。その点滅を見ると今も胸がざわつく。
保護者対応は校長がする時もあったが、基本的に自分一人だった。教育委員会や自治体との連携もなく、どこまで助けを求めていいか分からなかった。山田さんは「直接保護者に対応すると、端的にではなく、膨大な量で返ってくるのがしんどかった」と吐露する。「もし天理市のように保護者との間にワンクッションが入っていたら、ありがたかった」 ▽「伝言ゲーム」の危険 専門家は天理市の試みをどう見ているのだろうか。 大阪大の小野田正利名誉教授(教育制度学)によると、東京都の「学校問題サポートセンター」や福岡市の「学校保護者相談室」など、これまでも学校の保護者対応の一部を外部で担おうという動きはあった。2000年代後半に保護者によるトラブルが注目されて以降、各地で支援チームが創設された。 これらと、天理市の大きな相違は、保護者からの相談や要望があったときに、最初の窓口が学校なのか、それとも外部の施設なのかどうかだ。