ヒトに”心臓”がある理由を知っていますか?ノープランで進行する”自然選択”によって決定づけられた人類の「進化」
人種差別、経済格差、ジェンダーの不平等、不適切な発言への社会的制裁…。 世界ではいま、モラルに関する論争が過熱している。「遠い国のかわいそうな人たち」には限りなく優しいのに、ちょっと目立つ身近な他者は徹底的に叩き、モラルに反する著名人を厳しく罰する私たち。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性が絶句 この分断が進む世界で、私たちはどのように「正しさ」と向き合うべきか? オランダ・ユトレヒト大学准教授であるハンノ・ザウアーが、歴史、進化生物学、統計学などのエビデンスを交えながら「善と悪」の本質をあぶりだす話題作『MORAL 善悪と道徳の人類史』(長谷川圭訳)が、日本でも刊行される。同書より、内容を一部抜粋・再編集してお届けする。 長谷川圭 高知大学卒業。ドイツ・イエナ大学修士課程修了(ドイツ語・英語の文法理論を専攻)。同大学講師を経て、翻訳家および日本語教師として独立。訳書に『10%起業』『邪悪に堕ちたGAFA』(以上、日経BP)、『GEのリーダーシップ』(光文社)、『ポール・ゲティの大富豪になる方法』(パンローリング)、『ラディカル・プロダクト・シンキング』(翔泳社)などがある。 『MORAL 善悪と道徳の人類史』 連載第9回 『人類の祖先は「殺しも略奪もいとわないギャング」…「敵対」や「暴力」は人類に特異的な「協調」と表裏一体だった』より続く
進化の仕組み
人間の進化の仕組みを詳しく知りたいのなら、そもそもなぜ進化が起こるのかを知っておかなければならない。 1790年の時点で、イマヌエル・カントは「たとえそれが草の葉の創造についてであっても、意図の存在を否定し自然法則にのっとって説明できるニュートンが現れる可能性がある」と考えることは「不合理」であり、意味のないこととみなしていた。 しかし、それからわずか69年後にチャールズ・ダーウィンの『種の起源』が出版され、たとえ今日の時点では不可能だと思えることでも、明日には現実になる可能性があることを改めて証明した。
【関連記事】
- 【つづきを読む】人類はなぜ“ガン”から逃れることができないのか…非情なる「適者生存」のプロセスに従うしかない「進化」の過程
- 【前回の記事を読む】人類の祖先は「殺しも略奪もいとわないギャング」…「敵対」や「暴力」は人類に特異的な「協調」と表裏一体だった
- 【はじめから読む】ニーチェ『道徳の系譜学』では明らかにされなかった人類の“道徳的価値観”の起源…気鋭の哲学者が学際的アプローチで「人類500万年の謎」に挑む!
- なぜ人類だけが特異的な「協調性」を手に入れられたのか…決定的な出来事は「自然環境の変化」だった
- 進化心理学が明らかにする「人類が現代社会で幸せになれない理由」…どうして私たちは過剰に“砂糖”を摂取してしまうのか