ヒトに”心臓”がある理由を知っていますか?ノープランで進行する”自然選択”によって決定づけられた人類の「進化」
変異と選択という不規則な波
一見したところ、生物の世界は何者かによる意図的な介入の結果だとしか思えない。目が存在するのは見るため、心臓があるのは血液を循環させるため、チーターがスリムで足が速いのはうまく狩りをするため、鳥が空を飛ぶのは……などなど。 しかし進化論が、そのような考え方は目的論的な世界観に満ちた幻想に過ぎないことを証明した。生命には目的があるように見えるだけで、実際には変異と選択という不規則な波に従っているだけだ。 知的に見える仕組みも、実際には外部からの選択圧(疫病や気候変動)にさらされながら、おびただしい数の変種が何百万年もの時間をかけて変化をしてきた結果なのである。
「変化を伴う継承」
ダーウィンの言葉を借りるなら「変化を伴う継承」が生じるときに進化が起こる。進化には、変種、生殖活動の成功率の変動、遺伝など、数多くの要因が関係している。不規則な突然変異で変種が生まれる。新たな変種と旧種間の生殖成功率の違いが作用し、継承を通じて次の世代では新種と旧種の比率が変わる。 この過程は自然選択(自然淘汰)と呼ばれている。 自然選択は「無作為に」進行する。つまり、「計画性」がない。このプロセスは誰からの介入も受けずに、哲学者のダニエル・デネットの言葉を借りれば「アルゴリズムのように」進む。 アルゴリズムとは意思決定プロセスのことで、繰り返し正しく用いることで、機械的に特定の結果を導き出すことができる。進化は、変異と選択を繰り返し行うことで、適応という結果を導き出す―そして長い目で見れば、それが新種の誕生(種の分化)につながる。 進化という競争では、競争相手よりも自分を少しでも押し通すことができれば十分。それさえできれば、最適な特性は必要ない。実際のところ、最適化戦略は適応の障害になる。選択圧によってリソースの最も効果的な使用が求められるからだ。 完璧主義者は痛い目に遭うことになる。 『人類はなぜ“ガン”から逃れることができないのか…非情なる「適者生存」のプロセスに従うしかない「進化」の過程』へ続く
ハンノ・ザウアー、長谷川 圭
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