堅調さ際立つシンガポール商業用不動産市場、ただ一つ大きな例外も
不動産サービス会社コリアーズ・インターナショナル・グループがまとめたシンガポール政府のデータによると、国内のビジネスパーク全体の空室率は1-3月期に約22%まで上昇し、過去10年以上で最も高い水準となった。
グーグルの親会社アルファベットは、市内中心部のはずれにあるビジネスパーク、メープルツリー・ビジネスシティーで約6万平方フィートのスペースを手放した。グーグルの広報担当者は、不動産投資がハイブリッド型労働力の現在および将来のニーズに合致するよう取り組んでいると説明した。
売却の動き
投資家の信頼も打撃を受けている。昨年以来、別のREITであるメープルツリー・インダストリアル・トラストは、チャンギにある「シグネチャー」と呼ばれる9階建てのビルを含む、5億3300万シンガポール・ドル(約620億円)相当の国内ビジネスパーク資産3件の売却を模索していると関係者が明らかにしている。政府系投資会社テマセク・ホールディングスの支援を受けている同REITの広報担当者はコメントを控えた。
地元の開発業者フレーザーズ・プロパティは最近、パークの中心部にあるサービスアパートメントとホテルとの複合施設の売却に合意している。
最近、チャンギで明るいニュースがあったのも事実だ。ジュリアス・ベア・グループは4月、700人近いスタッフをメープルツリー・ビジネスシティーからチャンギビジネスパーク内の7万5000平方フィート以上という、より広いスペースに移したと発表。同社はマリーナベイ地区にもオフィスを構えている。
残りの空きスペースについてはテナント探しが続く。IBMのビルでかつて入居者で埋まっていたフロアが今は静まり返っている。ほこりをかぶった22年末までの退去を促す看板が掲げられたフロアや、スペースを区切るパーティションや家具はあるものの人の姿はないフロアもある。
原題:A Global Commercial Property Haven Shows Cracks in Singapore(抜粋)