堅調さ際立つシンガポール商業用不動産市場、ただ一つ大きな例外も
(ブルームバーグ): シンガポールの商業用不動産市場は世界的な不況の中で際立つ強さを見せているが、一つだけ大きな例外がある。
シンガポールのセントラル・ビジネス・ディストリクト(CBD)のきらびやかな高層ビル群から9マイル(約14.5キロメートル)の場所に、71ヘクタール規模の「チャンギビジネスパーク」はある。これはシンガポールが新たなビジネス拠点を築こうとする大がかりな取り組みの好例だ。
チャンギビジネスパークはシンガポールの「東のCBD」と呼ばれ、当初、米IBMやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などのテクノロジー大手を引きつけた。また、JPモルガン・チェースやシティグループなど世界的な銀行が顧客の目には触れないバックエンド業務に携わるスタッフを配置した。
だが、このビジネスパークは現在、急速に空洞化しつつある。シンガポール政府の綿密な都市計画や、外国企業に事業の拡大を促そうとする同国の取り組みに打撃を与えている。不動産コンサルティング会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドが追跡調査した同パーク内の商業施設10カ所全体の空室率は、過去3年で2倍以上の40%近くにまで上昇している。
同パークの苦境は、テクノロジー企業や金融機関の世界的なレイオフが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降の在宅勤務の推進と相まって、世界で最も魅力的な金融ハブの一つであるシンガポールで、政府の強力な支援を受けたプロジェクトでさえも大きな圧力を受けていることを示している。
シンガポール中心部の混雑する商業地区では、一等地のオフィス賃料が今年1-3月(第1四半期)に15年ぶり高水準へと上昇し、ビルはほぼ満室状態であるのとは対照的だ。
スペース縮小
IBMはチャンギビジネスパークの2つのビルで計12フロアを利用していたが、2フロアまで減らしている。非公開情報だとして匿名を条件に事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。UBSグループは11万平方フィート(約1万220平方メートル)以上あったスペースを半分以下に縮小。