南方版「ハルビン」の台頭――氷雪観光市場での競争、その強みとは
【東方新報】業界関係者によると、南方地域での氷雪観光は開発コストが高いものの、希少性があり、その分価格も高く設定できるという。 冬の到来とともに氷雪観光が注目を集める中、今年は南方地域が新たに氷雪観光の競争に名乗りを上げ、北方の「ハルビン(Harbin)」など従来の氷雪観光地と観光客を奪い合う展開となっている。 12月16日、中国文化観光部は「2024~2025年全国氷雪観光の優良ルート」を発表し、12のルートが選ばれた。その中には「知音湖北(Hubei)・南国の氷雪」「巴渝(重慶<Chongqing>)の雪景・夢幻の旅」「蜀山氷雪・安逸四川(Sichuan)」といった南方の省のルートが3本含まれている。 ■南方地域も「ハルビン」を目指す 12月7日、2024年四川省冬季観光の開幕式が九寨溝(Jiuzhaigou)で行われた。「蜀山の雪景を楽しみ、攀西の日差しを浴びる」というテーマのもと、四川省は12月から来年3月まで「冬の四川観光消費シーズン」を開催し、5000件におよぶ文化観光イベントや1.5億元(約31億8957万円)相当の観光キャンペーンを展開している。主要なスキー場、温泉、観光リゾート地など、冬季向けの多彩な観光商品が用意されている。 同日、雲南省(Yunnan)デチェン・チベット族自治州(Diqing Tibetan Autonomous Prefecture)の普達措景勝地では「シャングリラ・氷雪の約束」が開幕した。観光客を呼び込むため、期間中は入場料の無料化や5割引~9割引の割引キャンペーンが実施される。雪景色が美しい高原地帯で、観光市場の活性化を目指す取り組みだ。 雲南省はこれまで「陽光観光」が中心だったが、近年は冬季の氷雪観光にも力を入れ始めている。また、「避暑地」として知られる貴州省(Guizhou)も秋冬観光をプロモーションしており、「南国氷雪の都・貴州六盤水」をテーマにしたスキーシーズンが間もなく全面的にスタートする予定だ。 四川師範大学(Sichuan Normal University)歴史文化と観光学院教授であり、四川省ガイド協会会長の陳乾康(Chen Qiankang)氏は、「氷雪観光は観光業の中でも近年急成長している分野の一つであり、特に北京冬季五輪以降、東北3省や京津冀(北京・天津<Tianjin>・河北<Hebei>)地域が氷雪観光地として大きな影響力を持つようになった」と述べている。 一方で、南方の人びとにとって氷雪観光は新鮮味があり、大きな潜在市場があると陳氏は指摘する。四川省の西嶺雪山や峨眉山、王崗坪、さらには四川省カンゼチベット族自治州(Garze Tibetan Autonomous Prefecture)・アバ・チベット族チャン族自治州(Ngawa Tibetan and Qiang Autonomous Prefecture)などの高原地帯、雲南省のシャングリラ市(Shangri-La)などはスキー場の建設に適しており、実際に多くのスキーリゾートが整備されている。 重慶市政府の観光経済顧問であり、重慶大学(Chongqing University)教授の蒲勇健(Pu Yongjian)氏も、「南方では氷雪観光の需要が高い一方で、北方まで行くには費用や時間がかかるため、南方で氷雪観光地を整備する方が現実的だ」と語る。また、技術の進歩により、南方でも人工的に氷雪を作ることが可能になり、氷雪観光の実現性が高まったという。 さらに、蒲氏は「北方と南方では観光客の嗜好にも違いがある。北方の人びとは長距離スキーなどアクティブな氷雪スポーツを好むが、南方の人びとは雪景色を楽しんだり、滑りやすいアイススケートなど、より穏やかな氷雪体験を好む傾向がある」と述べ、南方特有の観光スタイルが求められると指摘する。 ■南方の強みとは ハルビンが大成功を収めたことで、氷雪観光は全国に広がり、多くの地域がこの市場を狙うようになった。特に東北3省では観光資源を最大限に活用し、吉林省は世界クラスの氷雪観光地を目指し、2025年までに観光収入7200億元(約1530億9936万円)、4億人の観光客を目標に掲げている。 一方、南方地域が氷雪観光に参入する強みはどこにあるのか。蒲氏によれば、「南方で氷雪観光を開発するコストは高いが、その希少性から価格も高く設定できる。また、南方は経済力が高く、消費意欲が旺盛であるため、市場としてのポテンシャルが大きい」と述べている。 陳氏は、南方地域の氷雪観光は観光色が強く、収益性が高いと指摘する。南方の観光客はスキーの経験が少なく、自分の装備を持っていないため、都度チケット購入、設備レンタル、インストラクターの依頼、宿泊、食事などを一度の観光で利用することが多い。そのため、スキー場の総合的な収益は北方よりも良好だという。 また、造雪機の普及により雪の少ない地域でも氷雪観光が可能になったことや、南方地域では温泉と氷雪観光の組み合わせが観光客に人気である点も強みだ。 例えば、貴州省は冬季観光のプロモーションで、「温泉」「民族文化体験」「スキー」など6つの特色ある観光商品を打ち出し、北方の氷雪観光と競争している。 南方地域が氷雪観光市場に参入したことで、冬の観光はより多様化し、新たな観光スタイルが生まれている。今後、南方の希少な氷雪資源と地域ごとの特色を活かした観光地づくりが、観光市場をさらに活性化させるだろう。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。