沖縄伝統「アヒル取り競争」、愛護団体「虐待」批判の中で実施 「昔は自宅で養っていた」
漁師らが木製の手こぎ舟で競争し、豊漁と航海の安全を祈願する伝統行事「糸満ハーレー」が9日、沖縄県糸満市で開催された。動物愛護団体から「虐待」と批判され、刑事告発にまで発展した「アヒル取り競争」も予定通り実施された。 アヒル取り競争は港内の海に放ったアヒルを泳いで捕まえる伝統行事。「アヒラートゥエー」と呼ばれている。 東京のNPO法人が「生きた動物を海に投げ入れ、逃げ惑う動物を大勢の人間が追いかけ、追い詰めるという一連の行為は非人道的」などと訴え、動物愛護法違反罪で行事の関係者を刑事告発したが、那覇地検は今年4月、関係者を不起訴処分としていた。 この日のアヒル取り競争では、主催者側が参加者に、アヒルの首や羽をつかんだり、苦しめたりしないよう注意喚起を徹底した。 地元自治会の男性役員(72)は「昔からの伝統行事。アヒルはぜんそくの薬にもなるため、海人(うみんちゅ)は自分の家でアヒルを養っていた」と振り返り、「糸満の人は分かっている。動物愛護団体の人も、説明すれば分かってくれると思う」と理解を求めた。 大阪市から糸満ハーレーを見に来たという保育士の女性(56)は「反対している人がいるのは知っているが、伝統的な催しなので受け入れてほしいと思う」と話した。 糸満ハーレーは毎年、旧暦の5月4日に行われ、梅雨明け前の風物詩とされる。鐘の音が響く中、「サバニ」と呼ばれる木製の手こぎ舟で速さを競うレースも行われた。色とりどりの衣装に身を包んだ若者らが水しぶきを上げながら船をこぐ姿に、観客から声援や指笛が飛び交っていた。