いまだ「マンガは読書と認めない」という考えが根強い日本に対して、じつは「英国」では「コミック」読書にも大きな価値が認められていた…!
UKのNTL(国立識字基金)では日本では行われていない8~18歳の子ども・若者のコミックの読書の調査("Children and young people’s engagement with comics in 2023")や音声コンテンツに関する調査("Children and Young People’s Listening in 2023")を実施している。これらと楽しみのための読書に関する調査(“Children and young people's reading in2024")を合わせて見ると非常に興味深いことがわかる。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言 前編記事『「日本の小中学生」の「読書量」が過去最高水準になっているのに対して、じつは過去最低にまで読書量が減少してしまった「英国の子どもたち」の実態』より続く。 まず8~18歳全体では「楽しみのために読書する」34.6%、「音声コンテンツを楽しむ」37.5%、「コミックを月1回以上読む」40.3%と、音声やコミックの方がわずかだが高い数字が出ている。 年齢別に見るとコミックは年を取るほど減少していく一方、音声コンテンツは8~16歳までは4割弱でほぼ変わらず、16~18歳では49.1%とむしろ増える。 日本ではいまだ「マンガは読書と認めない」「音声で聴くのは読書ではない」という考えが根強いが、英国のNLTはそういうスタンスではない。
コミック読書の位置づけと影響
基本的にコミックの読書に関しては良い影響しか報告書には書かれていない。 コミックを読む子ども・若者は、読まない子供と比較して「読書を楽しむ」割合が約2倍(58.6%対33.1%)と高くなり、自身を「良い読者」と評価する割合も高い(86.0%対76.3%)。また、毎日何かを読む割合が非読者と比較して高い(35.7%対22.8%)。 コミックは、より複雑なテキストへのゲートウェイとなること、(意外にも)ウェブコミックの活用が学習者の理解力向上に貢献すると示されている。 また、多くの読者がコミックを通じて現実世界の心配事や不安からの一時的な解放を得るなど、メンタルヘルスへのよい影響を感じている。ファンタジーやSF、ロマンスを通じ、より前向きな心理状態を維持する助けとなっている。 発達性ディスレクシアなど、読書に困難を感じる子どもたちにとっても、視覚的要素と文字情報の組み合わせが読書への抵抗感を低減させる効果がある。 おもしろいのは、多くの読者が、コミックを読むことを通じて「自分でもコミックや詩の創作を触発された」と言っていることだ。しかしたしかにマンガを読んだことで「マンガを描こう」と思う子どもは、自分の子ども時代を思い返してみても珍しくはない。 同報告書では日本マンガについてはほとんど触れられていないが「マンガを通じて日本の文化を知った」というような異文化理解の促進効果も描かれている。 コミックの効果は年齢や社会経済的背景を問わず広く観察され、英国では読書率低下傾向があるなかで、コミックが重要な役割を果たす可能性を強調している。