アサヒとキリンの飲料2社が発注プロセスを最適化、HacobuのPSI管理サービスで
アサヒ飲料、キリンビバレッジ、Hacobuの3社は2024年10月29日、オンラインで会見を開き、Hacobuが提供するPSI(生産、販売、在庫)管理サービス「MOVO PSI」について説明した。アサヒ飲料とキリンビバレッジがMOVO PSIの実証実験を行ったところ、輸送費や在庫日数の削減で有意な効果が得られたという。両社は同年11月1日から、納品先の在庫管理を行うVMI(Vendor Managed Inventory)拠点にMOVO PSIを順次導入する方針である。納入数は両社が国内にそれぞれ展開する十数のVMI拠点で、2025年春ごろまでをめどとしている。Hacobuは両社への納入を含めて3年間でMOVO PSIを100拠点に納入したい考えだ。 【アサヒ飲料とキリンビバレッジによる「MOVO PSI」の実証実験の結果】 Hacobuはこれまで物流を構成するプロセスである発送と発注の内、発送に対応するトラック予約受付サービスの「MOVO Berth」や動態管理サービスの「MOVO Fleet」を展開してきた。今回のMOVO PSIは、同社として発注プロセスに対応する初のサービスとなる。同社 執行役員CSOの佐藤健次氏は「MOVOのサービスの利用事業所数は2万6000、累計登録ドライバー数は60万人、月間トランザクション数は170万となるなど採用が広がっている。物流情報プラットフォームとしての役割を果たし、目標である“運ぶを最適化する”を目指せる状況になりつつある」と語る。 今回開発したMOVO PSIは、2023年6月に政府が発表した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」で示されている、着荷主に求められる発注の最適化や、発荷主に求められる発送量の適正化への貢献を目指している。 発注プロセスでは、欠品を恐れて必要以上の量をそろえようとする「ブルウィップ現象」が発生することが知られている。消費者の需要に対して、店舗がより多く売れることに備えて多めに補充し、店舗に納品する小売センターが店舗の補充要求を受けてさらに多めに発注し、卸売センターも多めの発注を行い、メーカーはこの需要に合わせて発注量よりも多く製造しようとしてしまう。もし、企業間で販売量や在庫量の情報が共有されていれば、このような“多めの発注”をしなくても済むようになり、輸送量の平準化につなげられる。 また、スーパーマーケットなど週末に販売量が集中する業態では、金曜日により多くのトラック台数が必要になる傾向がある。そこで、企業間での販売量や在庫量の情報共有によって、発注数量を調整すれば、積載率の低い月曜~木曜のトラックを有効活用することで、金曜日のトラック台数を減らすことが可能になる。 MOVO PSIは、メーカー、卸売業、小売業の企業間をつないで、PSI情報を管理/共有/分析するプラットフォームである。各企業はMOVO PSIを通じて日々のデータにアクセスし、過剰在庫や欠品を防ぎつつ、在庫量や輸配送量を最適化することができる。 MOVO PSIは2つのAI(人工知能)モデルを搭載している。1つは、需要予測のAIモデルで、卸売業や小売業からの受注を予測し、在庫の変動を正確に把握する。もう1つは、輸送頻度を平準化するAIモデルで、必要最低限の補充数量を毎日一定に保つため、膨大な組み合わせの中から最適なパターンを計算し、現場の実務を支援する。これら2つのAIモデルにより、卸売業や小売業は必要な数量だけを効率良く在庫できるようになり、メーカーは高い積載率のトラックにより少ない台数で効率的な発想が可能になる。 なお、MOVO PSIの開発では、プラットフォームの企画と販売をHacobuが担当している。AIやデータサイエンスを活用した共通データ基盤は、JDSCが同社の需要予測ソリューション「demand insight」をベースに開発した。