消えた巨大都市カホキア。今も解明が進む古代アメリカの謎
最大人口5万人超。世界でも有数の大都市だった
先コロンブス期の居住地として最大級であった古代都市「カホキア」。ミシシッピ文化の文化的、宗教的、経済的中心地であり、最盛期には2万人もの人々が暮らしていたという。これは当時の欧州の大都市に匹敵する規模だ。周辺の農場や村落を含む「グレーター・カホキア」の人口は、西暦1100年頃にピークを迎え、約5万人に達したとされる。 【写真集】よみがえる古代遺跡の栄光 ── 最新CGで再現する完成当時の姿
古代アメリカ史における最大級の謎
しかし、そのわずか250年後にカホキアは人々に放棄された。研究者たちはその理由を解明しようと試みている。 人々がカホキアを放棄した理由として最も一般的なものは、洪水や干ばつといった自然災害だ。一部の学者は、カホキアが洪水の少ない時代に発展し、その衰退が大規模な洪水の再来と一致していることを示している。 だが、2024年7月、カホキアに人々が住んでいた時代の植物の炭素同位体を分析した研究者たちは、干ばつがカホキアに壊滅的な影響を与えたとする説に異を唱える論文を発表した。 「カホキアの作物や他の食料源の多様性に関する数十年にわたる研究を行なったが、食料不足がカホキアを放棄する決定的な要因となったとすることに懐疑的である」と、土地管理局の考古学者ケイトリン・ランキン氏はメールで述べた。 ランキン氏は、たとえ干ばつがこの地域の農業に影響を与えたとしても、カホキアの農民たちは少なくとも8種類の作物を栽培しており、住民たちは「巨大な淡水漁場、世界有数の渡り鳥の飛行ルート、長年の地域コミュニティによって形成された多年生の湿地植物やナッツ、果物が豊富な『食の森』へアクセスできた」と説明しており、飢えに苦しむことは考えにくいという。 「だからといって、干ばつが食料を育てていた場所に影響を与えなかったというわけではない。それに、作物の不作が起きなくても、干ばつが地域を不安定化させた可能性はある」とランキン氏は補足している。