公園を人の集まる人気スポットに!飲食業界の異端児の挑戦
葛西臨海公園は、こんなリニューアルで家族連れを中心とした多くの客を呼び込んでいる。人気スポットに変えたのは東京・渋谷にある民間企業のゼットンだ。 1995年創業のゼットンの本業は飲食だ。東京やハワイを中心に80店舗近くを運営、売上高は125億円(2024年1月期)。代表ブランドが代官山や中目黒にある「アロハテーブル」だ。 ハワイ産の希少な蜂蜜をかけて食べる「ビッグアイランド・ビーハニー パンケーキ」(1089円)など、ハワイ体験にこだわっている。 ゼットンが公園の事業に乗り出すきっかけとなったのが2017年の法改正だ。収益の一部を公園の整備に還元することで、民間企業が公園で自由なビジネスをしやすくなった。この制度を利用してゼットンは各地に進出した。 例えば九州国立博物館(福岡・太宰府市)に隣接した庭園には、眺めのいいカフェを作り評判になった。中之島公園(大阪市北区)にはリバーサイドのビアガーデンを仕掛け大盛況となっている。公園事業はまだ始めて4年だが、売り上げは2倍以上に伸びた。
神奈川・藤沢市の鵠沼海浜公園で、「天気が良ければ富士山が見えて絶景です」と言うのはゼットン社長・鈴木伸典(52)。 ここには夕景を眺めながら食事のできるテラス付きのカフェを作るという。海から上がったサーファーがそのまま入れる出入り口も作る気だ。
公園を変えるゼットン流秘策~眠れる「宝」をフル活用
公園の中に店を作る時、鈴木はあるポリシーを貫いている。 「そこにどんなレストランがあれば、その街はもっと使いやすくなるか、もっと歩きやすくなるか。そんなことを考えて今まで店を作ってきました。それと同じことが公園にも言えるかなと」(鈴木) 〇公園を変える秘策1~宝を見つける 岐阜市のシンボル・金華山の麓に広がる岐阜公園で、官民一体となった再整備が始まる。その事業者のひとつにゼットンが選ばれた。 現地を訪れた鈴木は、必ず自分で時間をかけて歩くことから始めると言う。探すのはその場所にしかない「宝」だ。岐阜公園で見つけたのは「包み込んでくれるようにそびえ立つ金華山、そして精かんで凛々しく作り込まれた庭園」だと言う。金華山と庭園という見る者の心を和ませる景観。この宝を最大限に生かす施設として景観一望のレストランを作るつもりだ。 〇公園を変える秘策2~宝を生かす仕掛けを作る 2023年、鈴木は横浜市中区の山下公園にカフェ「ザ・ワークハウス山下公園」をオープンさせた。そのテラス席に設けたのが足湯だ。 山下公園の宝は独特の風情を持つ横浜港だとして、その風情をじっくり味わえる場所を作ったのだ。 カフェで提供するメニューにも横浜の「宝」とも言えるものを加えた。