「継ぐつもり、全くなかった」臨床心理士の女性が、父の野菜加工会社を承継した理由 社長就任で「メンタルが驚くほど変わった」
臨床心理士だったとき、父親が経営する会社を継ぐ気持ちは全く無く、「利益を追う仕事は、臨床心理士とは180度逆のもの」と思っていました。しかし、應和春香(おうわ・はるか)氏(39)は、父親の後を継ぎ、野菜加工販売企業「村ネットワーク」(大分県豊後大野市)の社長に就任しました。いま、「大分の野菜畑」と呼ばれる地で、野菜パウダーなどで野菜の可能性や消費量を広げることに尽力しています。父親から事業承継をした経緯や葛藤、事業に対する思いについて、應和氏に聞きました。 【動画】なぜ事業承継が大切なのか、専門家の見方は
◆両親の口車に乗せられて…
ーー事業内容を教えてください。 村ネットワークは、野菜の加工・販売を行う事業会社です。 カットやパウダーなど、形を変えることで賞味期限を延ばすなど野菜の可能性を広げ、消費量を増やしたり新しい使い方を知ってもらったりすることが目的です。 父が経営していた時は、業務用のカット野菜を地元の学校や病院に卸すことをメインとしていました。 今は、一般消費者向けにパウダー野菜(野菜を粉状に加工し、使いやすくしたもの)の事業を拡大していこうと奮闘している最中です。 ーー事業承継をされたきっかけや経緯を教えてください。 もともと、臨床心理士をしていましたが、私自身の出産・育児をきっかけに、2016年に村ネットワークに入社しました。 最初は「子どもが熱を出しても、父親の会社なら融通がきくからちょうどいいよね」と両親の口車に乗せられたんです(笑)。 それから、パウダー野菜の事業を本格的に任され、いつの間にか父が行っていた事業も私が担当するようになり、気づいたら社長というポジションに就いていました。 私の兄や夫が継ぐという話もあったのですが、父と折り合いがつかなかったようです。
◆臨床心理士は「経営に最も向かない」と思っていた
ーー父親からの承継では、継ぐ側にもさまざまな葛藤があると思います。應和社長に迷いはありませんでしたか? 最初は継ぐ気はまったくなかったんです。 入社まで7年間、臨床心理士の仕事に携わってきました。 臨床心理士の仕事は、子育てに悩むお母さんたちをサポートすることであり、自分の利益を追う行為は決して許されません。 相談者にも、臨床心理士の力ではなく、悩んでいる本人の力で解決できたと思ってもらう必要があります。 一方で、経営は自社の利益を追う行為であり、お客様に「この商品のおかげで生活が豊かになった」と思っていただくことですよね。 臨床心理士とは考え方を180度変える必要があったので、自分には無理だと思い込んでいました。 ただ、承継の話が現実的になったとき、「もし自分の中で納得するプランを組み立てることができるのであれば、やってみてもいいかな」と思えたんです。 それが、「パウダー野菜の力で子育てに悩むお母さんたちを助ける」というものでした。 経営者向けのセミナーで「経営とは誰かに価値を提供して幸せにすること」だと教えてもらったのも、経営に対する考えが根本から覆ったきっかけです。