「継ぐつもり、全くなかった」臨床心理士の女性が、父の野菜加工会社を承継した理由 社長就任で「メンタルが驚くほど変わった」
◆社長になって「メンタルが驚くほど変わった」
ーー社長になってみて、應和さんご自身が変わったと思うのはどんな瞬間ですか? 社長就任前も、常務として経営に携わっていたので、実務が変わることはほとんどありませんでした。 ただ、メンタルは驚くほど変わりましたね。 継いだ当初は、「あなたはどう考えていますか」「この問題はどう判断して進めていきますか」という自分との対話がすごく増えました。 鏡の部屋に自分一人だけが閉じ込められた感じです。 自分の会社だということ、そして従業員の人生を預かっているということもありますが、1番は「父の会社だ」というプレッシャーが大きかったのだと思います。 ーー應和社長が父親から経営を任された1番の理由はどんなものだと思いますか? 私はしばらくの間、外部から会社のことを見ていたので、客観的に物事を判断できたというのが大きいと思います。 学校を卒業してすぐ父の会社に入社していたらそうはいきません。 加えて、臨床心理士として経験した、感情に飲み込まれない訓練も役に立っていると思います。 とはいえ、最近、父から経営のやり方について「認められない」と意見されたことがありました。 経営について基本的には私に一任してくれていたのですが、事業承継にあたり、父の中でも整理しきれていなかった部分があったのかもしれません。 ただ、父との衝突は再度自分を見つめ直す機会になったので感謝しています。
◆事業承継しても、何でも引き継ぐ必要はない
ーー社長に就任して、まず取り組んだことを教えてください。 力を入れる事業の見極めです。 村ネットワークに入社して7年、注文の量や社会の動きを見てきて、人的リソースや資金を注力する商品の見極めができるようになってきました。 今は父から継いだ業務用カット野菜の事業は少しずつ縮小しつつ、一般消費者向けにパウダー野菜や米粉の事業を拡大しています。 会社の総売上が約1億2000万円、弁当事業を除いた6割のうち半分以上を今はカット野菜が占めているのですが、いずれはパウダー野菜や米粉がメインになればと思っています。 ーーカット野菜の事業を縮小しようと思った理由は何だったのでしょうか。 我が社のカット野菜は、工場で手作業でカットしており、柔軟なニーズに対応できることが他社にない強みです。 しかし、手作業は重労働ですし、技術や経験を持った人材が必要になります。 使い道を考えても、今後どんどん市場が拡大するわけではありません。 一方、パウダー野菜は、現在はまだ主流ではないものの、ワクワク感や可能性は無限です。 作業工数もカット野菜よりグンと減るので、スタッフに働きやすい環境を提供することにもつながります。 米粉に関しても、昔よりニーズは格段に増えましたよね。