加速する介護事業者の「倒産」、過去最悪のペースへ…「“利用者さんのため”に、事業拡大はしない」が招く本末転倒
倒産回避には「貸借対照表(BS)を読む力」も必要
単価削減が実施されるなか、事業規模を拡大せずに利用者さんと向き合い続け、経営が困難になりながらもそのスタイルを変えることがないとどうなるか。毎年のように赤字が続き、債務超過に陥って、にっちもさっちもいかなくなります。 通常、2期連続の赤字や債務超過に陥ると金融機関との取引が難しくなります。銀行から借入することなく経営するのはかなり困難で、「水道の蛇口をひねらないで洗濯する」と言っているようなものです。できないものはできないので、銀行から借入できない=会社が潰れるくらいに思っておいてもよいでしょう。 つまり、倒産しないためには銀行との取引ができる状態にしておく必要があり、それがすなわち2期連続赤字を出してはいけない、債務超過になってはいけない、ということになります。 自社の経営がうまくいっているかどうかは決算書、とりわけ貸借対照表(BS)を見ることでわかります。しかし、ここで問題となるのが、中小零細企業の経営者でBSを読める人が少ないということです。 BSを見たこともない、あるいは見たことはあるけれど何が書いてあるのかさっぱりわからない、という経営者が結構います。そして、わからないのでそのまま放置してしまう。かなりの数の経営者が、自社の状況がわからないまま経営し、気づくと金融機関からも借入できなくなっていて、M&Aをしたいと思っても、それすらできない。つまり、売却できる段階を超えてしまっていたということが少なからずあります。 経営者に必要とされるのは、BSを読む力です。自分の会社がどういう状態になっているかを細かく把握することが重要で、それが経営の効率化にもつながります。 そのうえで、もはや自社での経営が困難だと思えば、売却も検討に入る。手遅れになる前にどこかのグループに入る、すなわち合従連衡です。 実際、M&Aで売却を考える場合に、手の施しようのないBSを持ちこまれる経営者は少なからずおられますが、本当はもっと早く、手遅れになる前に持っていかなければならないのです。 売却の潮時を見失わないように、自社の状況を把握すべくBSを読むことが必要ですし、他企業のグループ企業になって、倒産する前に会社を維持することが大事です。