【高校サッカー選手権】100分間でも決着つかず。PK戦を制した東海大学付属熊本星翔が7年ぶりの決勝進出
第103回全国高校サッカー選手権熊本予選準決勝第2試合は、2019年以来となる5年ぶりの全国を目指す熊本国府と、全国初出場を果たした2017年以来、7年ぶりの全国を目指す東海大熊本星翔が対戦。お互いに持ち味を出し合ったゲームは、延長戦まで含めた100分間でも決着がつかず、PK戦にもつれ込む緊迫した展開となった。 【フォトギャラリー】熊本国府 vs 東海大熊本星翔 開始直後、東海大熊本星翔は、西岡大輝監督が「なんでもできる」と信頼を寄せるキャプテンのMF中村勇心が相手選手との接触で痛み、担架で運び出されるアクシデント。急遽、1人目の交代として富澤克基が投入される。その影響もあってか、序盤は熊本国府が推進力を持って押し込む展開。FW清水駿の高さを生かし、シンプルに前線に送ってはセカンドボールを拾う形から、中村祐心、岩﨑祷真らがしかけていく。 ただ、やや押される展開にあっても、東海大熊本星翔はGKの水口然斗、センターバックの西田羽輝、渡邉尊翔ら守備陣が体を張って跳ね返すと、マイボールは低い位置からでも丁寧につなぎ、プレッシャーを剥がしながら前進。ただ、相手陣内に入ってからアタッキングエリアにかけては、相手の球際の強さなどもあって、なかなか深い位置までボールを運ぶには至らない。 熊本国府も、15分~20分あたり、そして35分過ぎと流れをつかむ時間を作るが、36分に迎えた決定機もゴールには結べず、前半はスコアアレスで折り返した。 後半の立ち上がりも熊本国府が押し込んだが、その後ペースを掴んだのは東海大熊本星翔。高い位置からのプレッシングによって熊本国府のリズムを寸断し、逆にテンポ良く動かしつつ、出しては動くというアクションの連続で相手陣内での時間を増やしていく。 しかし、FKのこぼれから井上陽太が狙った57分、細かくつないで右からのクロスをゴール前に送った66分、良い形で抜け出した丸野陽にボールが出た69分、さらに交代出場した宮田明空が持ち込んだ72分と、好機は作りながらもシュートに持ち込めなかったり、相手にブロックされたりで得点ならず。一方の熊本国府も、前半と比べて広くなった東海大熊本星翔のDFラインの背後のスペースを早い切り替えから狙うものの、GK竹馬奈玖からのフィードをつないで岩﨑が狙った67分、松元海斗、古川慎恩とつないだ終了間際など、フィニッシュまで持ち込むシーンはあっても精度を欠いてネットを揺らせず、前後半80分を戦い終えた。 迎えた延長は、お互いが点を取りに行く意識を高めたことでいっそうオープンな展開となり、劣勢の時間が長くなっていた熊本国府も個の突破からゴールに迫る。しかし延長20分を終えても双方に得点は生まれず、勝敗はPK戦で決することに。 3人目のキックが枠を外れた後攻の熊本国府に対し、先攻の東海大熊本星翔は5本とも成功させ、7年ぶりの決勝進出を決めた。 「能力はあるのに自信無さげにプレーしていた選手たちが、メンタルを成長させてくれた。時間はかかったが、計画的に、人もボールも動くサッカーを追求して質を高めてきたので、決勝ではその集大成を見せたい」と、J2の愛媛FCなどでプレーした経験を持つ就任4年目の西岡監督。「良くやったと言いたいが、まだまだ、とも言いたい」と、特に攻撃面のクオリティには満足していない様子で、「もっと早いテンポで、出して動く、その中で相手を外していくゲームをしたい」と話した。 決勝の相手、大津を率いる山城朋大監督は福岡教育大の後輩にあたるが、リスペクトの気持ちを持ちながらも自分たちのカラーを全面に出す覚悟だ。 (文・写真=井芹貴志)