排便がないと受診した59歳男性が大腸がん 検診結果は陰性だったのになぜ?…早期発見のために必要なこと
胃と腸の整え方
消化器内科医の松生恒夫さんが、豊富な診療経験を基に、胃や腸の整え方を紹介します。 【写真】のみ込んで撮影する「カプセル内視鏡」
大腸がんは、患者数が最も多いがんで、女性ではがん死のトップです。早期に見つけるため、検診では、便に血が混じっていないかどうかを調べる便潜血反応検査が行われています。がん死を減らす効果が確かめられている検査ですが、すべてすくい上げることができるわけではありません。この検査で陰性でありながら大腸がんが見つかる「偽陰性大腸がん」の患者さんが2~3割います。大腸がん検診をどう受ければいいのか考えます。
「健康だけが取りえ」だったのに…
会社員のAさんは59歳まで大きな病気はなく、健康診断の血液検査でもほとんど異常がありません。最近行った大腸がんの便潜血反応検査も陰性でした。「健康だけが取りえ」と自分でも思い、家族とも話していました。 便通は毎朝の習慣だったのですが、この夏は猛暑が続き、水分不足から便が硬くなり、1日おきになることもありました。排便がないと、腹部の膨満感が不快で、クリニックを受診されました。一度も大腸内視鏡検査を受けたことがないと言うので行うと、横行結腸に2.5センチの平坦(へいたん)なポリープがあり、組織を採取して検査に出すと、大腸がんという結果になりました。
便潜血反応検査には偽陰性がある
便潜血反応検査は2回便を採取しますが、がんがあった場合の感度(発見率)は早期がんで60~70%、進行がんだと80%程度と報告されています。これぐらいの感度があれば、十分に検診として実施する意味はありますが、100%ではありません。なぜ、検知漏れが起こるのでしょうか。 その理由を検討したリポートで4点が指摘されています。(1)病変部から出血がない。糞便(ふんべん)への血液の付着・混入がなかった(2)糞便に血液の付着・混入が不均一だった(3)受診者の採便方法や検体の保管方法が不適切だった(4)検査方法自体に技術的な問題があった。 (1)と(2)はこの検査方法の限界。(3)は、糞便の表面を擦過する方法の周知がひとつ。採便後の検体は冷蔵保管が必要です。(4)は検査機関の課題です。