『虎に翼』の癒やしを担う“ナイスコンビ”たち 寅子&よね、小橋&稲垣らの軽妙な掛け合い
NHK連続テレビ小説『虎に翼』の第23週では、これまで雲野(塚地武雅)と岩居(趙珉和)が、轟(戸塚純貴)とよね(土居志央梨)に協力を求めながら、準備を進めてきた「原爆裁判」が本格的に進んでいく。寅子(伊藤沙莉)や汐見(平埜生成)らは、裁判官として、雲野やよねたちは弁護士として、それぞれの立場から、この重大な裁判に臨む。 【写真】よねの“はじける笑顔”! 土居志央梨&戸塚純貴のオフショット 予告には、よねが寅子に「意義のある裁判にするぞ」と告げているシーンがあり、立場は違えども被爆者への想いが同じであることを感じさせる。そんな寅子とよねは、明律大学女子部の同級生として知り合い、これまでぶつかることもあったり、離れている期間もあったりしたが、長年の付き合いが続いている。 ツンデレのよねは、寅子への当たりが強かったりもするが、寅子はお構いなしによねの懐に入り、相談事を持ちかけたり、自分の話を聞いてもらったりし続けている。一見、水と油のような関係に見える2人だが、寅子はずっとよねが大好きだし、本当はよねも寅子のことが好きに違いない。深い絆で結ばれた友達同士だ。 『虎に翼』には、寅子とよねのように、ライバルや友人として良い関係性を築いているコンビがいくつか登場している。明律大学の女子部から法学部に進学した寅子やよねたちは、轟や小橋(名村辰)、稲垣(松川尚瑠輝)らと机を並べて法律を学んだが、その後もこの3人とは関わっていくことに。 よねは、戦地から復員した轟と偶然再会し、花岡(岩田剛典)の死を知って自暴自棄になっていた轟を励ました。轟が自分でも理解できていなかった花岡への想いを認め、気持ちを浄化させたよねは、轟と一緒に法律事務所を立ち上げる。2人は名コンビとなり、雲野から協力を頼まれた「原爆裁判」の原告弁護に奮闘していく。
なんだかんだ良い関係性の小橋(名村辰)と稲垣(松川尚瑠輝)
一方、小橋と稲垣は、法学部時代からつるみ、女子部出身者を見下していたが、寅子と同じく裁判官になり、最高裁家庭局の一員として、家庭裁判所設立準備室で寅子と一緒に仕事をする頃には、稲垣はすっかり感じのいい大人の男性へと成長していた。ところが、小橋は相変わらず減らず口ばかりで、寅子にも嫌な態度を取ることが多い。その後、稲垣は東京家庭裁判所の少年部部長に出世。そんな稲垣と比較して、小橋は後輩の秋山(渡邉美穂)に、「家裁平判事の俺にまでおべっかを使わなくていいから」などと自虐的な皮肉を言い、寅子を呆れさせる。元同級生は、出世をめぐるライバルではあるが、何だかんだ言いながらも、小橋と稲垣は良いコンビで、友情が続いているように見える。 ちょっとお笑いコンビのようなのは、寅子の甥で、花江(森田望智)の2人の息子・直人(青山凌大)と直治(今井悠貴)だ。直人は少年の頃から利発でしっかり者で、母親想いの良い息子だったが、大学生になってからも法律の勉強に励む真面目な長男。対照的に、次男の直治はジャズに夢中になり、大学に進学しないと言って、花江を心配させる。 中古で購入したサックスを四六時中練習し、家族が揃っている時に、空気を読まずに吹きたがる直治に、直人は「ダメだ、あと少しだけ耐えるんだ」と言って我慢させたり、直明(三山凌輝)の結婚式の計画を家族で話している際には、直治が「俺の演奏タイムも作ってくれよな?」と言い出すと、「お前が楽しむんじゃなくて、直明兄ちゃんのことを考えろ」とたしなめる直人。すると、直治は「俺の演奏で俺は楽しい。みんなも楽しい。だからよくない?」などと返していた。直人と直治の兄弟は、『虎に翼』でお笑いパートを担っているような“ナイスコンビ”ではないだろうか。 今週、本格的に描かれている「原爆裁判」は、『虎に翼』において大事なテーマの1つだが、非常に重い内容だ。そういった重要なことを取り上げつつ、心が通い合う友人同士の絆に感動させたり、“ナイスコンビ”で笑いを誘ったりして、緩急をつけることで、『虎に翼』は魅力的で愛されるドラマとなっているのだろう。
清水久美子